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甘いものリサーチ

「周さんは食べないんですか?」 僕らは公園の中の移動ドーナツ屋で注文をする。 「俺はいい……甘いのそんな好きじゃねぇし。あ、竜太は気にせず食えよ」 「………… 」 僕はバナナ味のとチョコチップの入ったドーナツと紅茶、周さんはコーヒーを注文して近くのテーブルに座った。 ……どうしようかな。 今のタイミングなら自然だよね? 気付かれないよね。 周さん、ちょっと鈍感だし。 僕はどうしても確認しておきたいことがあって、さり気なく周さんに聞いてみた。 「ねぇ、周さん。周さんって甘いのあんまり好きじゃないですよね? ……えっと例えば、チョコレートなんかも嫌いですか?」 うん、大丈夫…… 不自然じゃない。 「チョコレート?……あぁ、俺チョコレートは好きだぞ。甘いのじゃなくて苦めのやつあるじゃん? ビターチョコって言うのかな? 沢山は食わねえけどコーヒーと一緒に食ったりするし、あと酒入ってるやつとかもいいな。ああいう甘いのは大丈夫」 「へえ……」 そっか! よかった。 周さんはチョコレートは大丈夫なんだ。 ほら、もうじきバレンタインデーでしょ? 今更だけど「好き」って気持ちを伝えたくて…… こういうイベントに乗っかって、僕も周さんにチョコレートをあげたかったんだ。 でも周さんは甘いものは嫌いだって言うから、チョコはどうかな?って思ってた。 でも聞いてみてよかった。これで心配しないで周さんにチョコレートを贈ることができる。 「周さん、甘いのも大丈夫なのとダメなのがあるんですね。僕の作ったチーズケーキも大丈夫でしたよね。あ、圭さんの抹茶のパウンドケーキとかも……」 そう、周さんの「甘い」という物の基準がよくわからない。 「ああ、圭さんのケーキはちょうどいいんだよな。甘すぎず俺の好み! てか、陽介さんと俺の好みがきっと同じなんだろうな。俺ね、生クリームとかのケーキはダメ。チョコクリームのケーキもヤダ。チョコはチョコだけでいいんだよ。スポンジとかいらねえし、クリームも腹もたれそう……パンケーキとかドーナツもそんな感じがするから苦手。あとな……」 なんだか、スイーツはほとんど苦手って言ってる様なものだ。まだまだ苦手なものが出てきそうで終わらなさそうだったから、僕は周さんの話を遮った。 「じゃぁ、大丈夫なスイーツって何ですか?」 初めからこう聞いた方が早かったかも。 「ん? そりゃ竜太が作ったチーズケーキとチーズクッキー、圭さんの作ったスイーツ全部にビターチョコ ……あとは、伊達巻きと茶碗蒸し」 伊達巻きと茶碗蒸しはスイーツなの? そういえば周さん、卵好きだよね。 圭さんの作ったスイーツ全部……ってのがちょっと気に入らないけど、今度また圭さんにスイーツ作りを教えてもらおう。 でも、そっか…… バレンタインのチョコは手作りしようと思ってたけど、お酒の入ったやつが好きだって言ってるし、僕にはそんなのは作れないから、お洒落なのを買ってもいいよね。 今度康介に付き合ってもらって買いに行こう。 また楽しみが増えた。 どんなチョコにするか選んで、プレゼントも付けちゃおう。 周さんと甘い物話をしていると、後ろから誰かに肩を叩かれた。 周さんは面白くない顔をしている。 振り返ると、そこには康介と修斗さんが立っていた。 「またデート?……なんかいいね。仲良しさんが滲み出てる」 仲良しさんって… 「修斗さんと康介も仲良しさんじゃないですか」 僕が言うと、修斗さんが「そうだよ〜」と笑って周さんの隣に座った。 康介も僕の隣に座る。 「あれ? 竜太君いつもと雰囲気違う! どうしちゃったの? 今日は一段とかっこいいね!」 修斗さんがオーバーなくらいに僕のことを褒めてくれた。 ちょっと恥ずかしい。 「いや……今日は周さんとデートだから、少し身嗜みを整えただけです。あ……恥ずかしいからあまり見ないでください」 もう……ほんと恥ずかしい。 「ねえねえこれからどうするの? 一緒に遊ぼうよ! 俺らこれからカラオケ行こうと思ってたんだよね。どう?」 修斗さんが楽しそうに誘ってくる。 カラオケ…… 周さんの歌、聞きたいな。 僕が周さんの顔を見てると、軽くため息を吐き頷いた。 「とりあえず竜太がドーナツ食い終わるのを待てよ」 周さんがそう言うと、修斗さんは「俺も食う!」と言って注文しに走って行った。

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