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ダブルデート

「康介達もデートしてたんだね」 僕が横に座る康介にそう言うと、顔を赤くして恥ずかしそうに小さく頷いた。 康介ったらまだ慣れないのかな? 「お揃いのピアスもいいね」 少し揶揄ってみると、面白いくらい顔を赤くする康介。そんな康介を見て微笑ましく思った。 「ところでよ、康介……修斗ナンパされてるぞ。いいのか?」 急に周さんが話に割って入ってくると、慌てて康介は振り返り修斗さんの所へ走って行った。 周さんはクスクスと笑ってる。 修斗さんはドーナツを買いながら女の子二人組に話しかけられていた。 そこへ修斗さんの所へ辿り着いた康介が何かを喋り、プンスカして修斗さんの腕を掴んでこっちへ戻ってくる。 「もー! 油断も隙もないんだから! これで何回目ですか?」 怒っている康介とは対照的に修斗さんはへらへらと笑ってる。 「怒らないでよ〜。俺が悪いんじゃないでしょ?勝手に声かけてくるんだからしょうがないじゃん」 「そうなんだけどさ……なんだよ。修斗さんモテすぎなんだよ」 ……なんか大変そうだな。 「修斗さん、ドーナツそんなに食べるんですか?」 戻ってきた修斗さんの持っていたドーナツを見て驚いた。 僕と同じバナナドーナツとチョコチップのドーナツ、あとはプレーンのドーナツに生クリームがサンドしてあるドーナツ…… 「さっきの女の子がくれたんだよね。一緒に食べましょうって……これ康介食べてよ」 「はぁ? 俺そんなに食えねえって。修斗さん自分で食べてくださいよ」 「ほら、いいじゃん、美味しいよコレ」 そう言って修斗さんは食べかけの生クリームのドーナツを康介の口元に突きつける。 「………… 」 康介は何の抵抗もなく、パクッと修斗さんの手にあるドーナツにかぶりついた。 康介の唇に付いたクリームを修斗さんは笑いながら指で拭うと、その指をペロッと舐める。 「………… 」 「………… 」 僕は周さんと顔を合わせて思わず吹き出してしまった。 「照れてる割に、随分と大胆にイチャイチャするんだね康介は」 僕に言われて初めて気がついたみたいに、急にアワアワと真っ赤になる康介。修斗さんもそんな康介を見て爆笑している。 「そうなんだよ。康介って食い意地張ってるからさ、こういう時って無意識に食べるんだよね。可愛いよね」 「食い意地って何すか? そんな事ないです 」 「可愛いかどうかは別として、康介おもしれぇな」 周さんも笑ってる。 ……ほら、そんなにみんなで笑っていたら康介機嫌損ねて拗ねちゃうよ。 「ね、早く食べてカラオケ行きましょ。そのドーナツ僕もひとつもらっていいですか?」 僕は修斗さんからプレーンのドーナツをもらって、慌てて話題をカラオケに逸らした。

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