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各々のバレンタイン計画

「ねえ、どうしよう……俺こういうの初めてだからさ、わかんないんだよね」 「俺だって初めてだよ! どうなんだ? でもさ、こういうのって気持ちの問題だろ? 好きにすりゃいいんじゃね?」 「じゃぁ、康介君はどうすんの? なんで教えてくれないんだよ」 「………… 」 学校の昼休み。 さっきから康介と志音がブツブツと言っている。 今日は周さんと修斗さんは来ていない。 僕は康介と志音と昼休みを過ごしていた。 「竜太君も黙ってないで教えてよ。竜太君はどうするの?」 志音は高坂先生にバレンタインのチョコをあげたいらしいんだけど、男同士だしおかしいかな? ってさっきから気にしている。 こないだ僕と康介に先生と付き合っている事をカミングアウトしてからというもの、結構相談やら悩みやらを聞かされるようになった。 結局それらはノロケ話で終わるんだけど…… チョコ、あげたきゃあげればいいのに。 「僕は周さんにはチョコをプレゼントするつもりだよ。おかしいかな?」 そう言うと、志音はパァッと明るい顔をして頷いた。 「やっぱりいいよね? おかしくないよね? 俺もあげよう。喜んでくれるかな?」 なんだか志音って、大人びて見えたり子供っぽく見えたり、色んな表情をするようになった。 なんか可愛い。 「なに? 竜太君。ニヤニヤしてるよ」 「あ……志音って可愛いところあるんだな〜って思ったらちょっと可笑しくて……」 「だな!」 康介も隣で大きく頷いた。 「康介君は? 修斗さんには何もしないの?」 志音が康介に聞くと、康介は少し考えてるような感じで「……ん、俺はいいかな」そう呟いた。 あ……康介、嘘ついてる。 康介とは長い付き合いだから何かを誤魔化してる時って何となくわかるんだよね。 僕がジーっと康介を見ると、ソワソワと視線をそらした。 放課後、帰り支度をしていると康介が寄ってきて、相談したいことがあるんだけど……と言ってくる。 思った通り。 なんかあるんだな。 康介と一緒に下校し、僕の家に寄ってもらった。 部屋に入り床にぺたんと座った康介は、モジモジしながらなかなか話し出さない。 僕は康介を待たせ、飲み物とお菓子を部屋に運んだ。 それでもなかなか康介は話出さないので、僕の方から聞いてみることにした。 「相談ってさ、バレンタインの事でしょ? 修斗さんに何あげるの?」 「あ……えっと、うん、修斗さんにチョコあげたいんだけどさ……その……俺……俺がチョコ手作りするのっておかしいよな?」 真っ赤になりながらしどろもどろで康介が僕に言った。 志音にはあんな事言ってたけど…… 修斗さんにチョコをあげるんだとは思ってたけど、まさかの手作り。 「いいじゃん ! 修斗さん喜ぶよ! 実はさ、僕も初めは周さんに手作りチョコプレゼントするつもりでいたんだよね。でも周さん、お酒の入ったやつが好きだって言うから、それは作れないから買うことにしたんだ」 僕も手作りするつもりでいたとわかると、少し嬉しそうにする。それでもまだ何か浮かない顔をしため息を吐いた。 「なに? 他にも何かあるの? 心配事?」 「いや……心配事っていうか……チョコさ、どうやって作るのかな? 竜、俺に教えてくんね?」 申し訳なさそうに僕に向かってヘラっと笑う康介。 ……作り方?? 「え? 作り方って……ただチョコ溶かして固めればいいんじゃないの? ちゃんとした作り方なんて僕 知らないよ」 「そうなんかー?」 と康介は嘆いて携帯をいじり出した。 「ちょっと調べる…… 」 康介はしばらく黙って携帯の画面を眺めていた。 「なぁ、竜……チョコっつっても色んなのあるんだな。どうしよう……」 僕と康介はしばらくの間、美味しそうなチョコの画像を眺めていた。

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