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隠し事

あれから何回か康介のチョコ作りの練習に付き合った。 ただ溶かして固めるだけなのに、上手くいったり失敗したり…… なかなか安定せず、飽きてきたのか今度はトリュフを作ってみたいと言い出す始末。 「チョコでもトリュフでも、もうなんでもいいじゃん」 ちょっと面倒くさくなってきて、投げやりに言ってしまった。 「おぃ、そんな言い方すんなよ。でもさ、ただ溶かして固めるだけなのになんでこうも失敗するんだろう。チョコって難しいんだな……」 これは難しいわけじゃなくて、康介が大雑把なのと集中力が足りないせいだと思う。 「気持ちだからね。上手下手は関係ないよ。喜んでくれるといいね、修斗さん」 「うん」 康介が嬉しそうに笑った。 「ところでさ、康介は最近修斗さんと会った?」 僕は気付いたら何日も周さんと会ってない。お昼も教室に来なくなったし、メールもない。 「あ、そういえばさ、なんか忙しいみたいでお昼はしばらく一緒に食べられないって修斗さんからメールあったわ……何だろうね」 「また補習とかかな?」 周さんはテストの点数が悪かったり出席日数が足りないと言って、しょっ中教室に居残りをさせられている。 「いや、修斗さんは頭いいし、そういうのはちゃんとしてるよ。周さんじゃあるまいし、修斗さんが補習ってのは考えられないな……」 康介が首を傾げた。 今日は康介は助っ人でテニス部に参加するから、僕は美術室に寄り、少しだけ作業をしてから一人で下校する。 下駄箱で靴を履いてると、少し前に周さんが歩いているのに気がついた。 走れば追いつけるけど、まだ走れないから僕は大きな声で周さんを呼んだ。 「周さーーん!」 一瞬周さんの動きが止まった……かと思ったけど、気がつかないのかまたすぐに歩き出す。 あれ? 今、僕の声聞こえたよね? え? 僕、無視された? さっきのメールも返事が来てないし…… ちょっとムッとしながら、結局僕は一人で家に向かった。 歩きながら、片手で携帯を操作し周さんに電話をかける。 少しの呼び出し音の後、なぜだか焦った声の周さんが電話に出た。 『な……なんだよ、竜太。どうした?』 「僕、今日はメールも送ってるし、さっき下駄箱で声かけたんですけど……気がつきませんでしたか?」 『あっ……そうだった! 悪い……ちょっと忙しくってな』 なんかおかしい。 周さん、おかしい。 「わかりました。いいです。すみません」 それだけ言って、僕は電話を切った。 周さん、何かがおかしい。 僕に隠し事? 周さん、隠し事とか嘘が下手って事、付き合ってるうちにわかっている。 今も絶対何かを隠してる。 あくまでも僕の勘だけど…… 追及するか、どうしようか。 とりあえず康介に相談してみようかな。

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