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僕だって
周さんの様子がおかしいのは、何か理由があるんだろうけど……
こういうのは二回目だし、なんかやだ。
もう僕からは連絡するのをやめよう。たまには僕だっていいよね? こういうの。
周さんのこと、知らんぷりしてやる!
……そうは言っても、周さんからも何の接触がないからいつもと変わらない。
なんか悔しい。
もしかして、このまま周さんと話もしないままバレンタインデーになっちゃうのかな?
ちょっと不安になってきた。
康介に言っても、たまたま忙しくて連絡出来ねえんだろ? なんて言うし。自分のチョコのことで頭がいっぱいなのか、適当な返事にイラっとする。
今日もお昼は康介と二人で教室。
「………… 」
「なに? 竜、機嫌悪っ!」
「だって康介は気にならない? ずっとだよ? 何日目? 僕、昨日なんてあからさまに周さんに無視されたんだよ? 信じられないよ!」
「………… 」
「そうだ! 康介、僕ちょっと行ってくる」
「へ? どこ行くの?」
康介がキョトンとしてるけど気にせず、僕は二年生のフロアへ向かった。
行き先はもちろん周さんのクラス。
でも用があるのは周さんじゃない。
「………… 」
廊下の窓から教室の中を伺う。
何人かの先輩が僕に声をかけてきた。
「あ! どうしたの? 渡瀬くん 。あれ? 足怪我しちゃったの? 大丈夫?」
……悪いけど僕に話しかけないで。
「竜太君だぁ、何しに来たの?」
関係ない人はちょっと黙ってて。
僕は声をかけてくる先輩達を無視して教室の中を探した。
あ! いた!
「修斗さんーー!」
僕は教室の中に向かって、大きな声で修斗さんを呼んだ。
もちろん周さんも修斗さんと一緒にいたけど、僕は周さんのことは無視をする。
目だって合わさない。
僕に気がついた修斗さんは驚いた顔をして周さんの方を見る。
「修斗さんーー! ちょっといいですかー?」
修斗さんはなんだか落ち着かない感じで僕の方へ歩いてきてくれた。
「なに? 竜太君、周に用があるんじゃないの? 俺?」
「はい、周さんは関係ないですから!」
わざと周さんに聞こえるように、大きめの声でそう言った。
「ちょっといいですか?ここだと…… 」
僕は修斗さんの腕を引っ張り廊下へ出た。
チラッと周さんを盗み見ると、不機嫌そうな顔をして僕を見ていた。
そんな顔したって知らないよ。周さんだって、僕の事無視したんだから。
少し廊下を歩いてから立ち止まり、修斗さんの方を見る。
「あの……何か僕に隠し事してません? 周さんの様子がまた変なんです。僕の事、無視するんです」
「ああ……それね、うん……」
修斗さんも歯切れの悪い返事で、微妙な表情をして僕から目を逸らした。
これはもう間違いない。周さんはまた何かを企んでいるか、僕に後ろめたいことでもあるんだと確信した。
「何を隠してるのか知らないけど……周さんが僕を無視するなら、僕だってもう周さんの事なんか知らないんだから! ……って伝えておいてください!」
イラっとして、つい修斗さんにも強い口調で言ってしまった。
「……竜太君、怒ってる……よね? 康介はどうしてる? やっぱり怒ってるのかな?」
え? 康介?
「康介は別にいつも通りです……けど、もしかして修斗さんも何か関係してるんですか?」
「あ、いや……別に….ああ、関係あるっちゃあるんだけど。康介はいつも通りなら、俺は大丈夫だよね?……じゃ、周イラついてると思うから俺もう行くよ?」
そっか。修斗さんも関係あるんだ……
「あ! そういえばさ、竜太君はバレンタインデーの日って周に何かしようと考えてる?」
「え……? えっと……はい。でも周さんには言わないでくださいね。一応チョコあげたいなって思ってるんです」
僕の言葉に修斗さんは考え込んでしまった。
「……そっか、そうなんだ。わかった……じゃあね、竜太君」
なんだかすっきりしないまま、修斗さんは教室へ帰っていった。
修斗さんと別れ、僕もまた自分の教室に戻った。
なんか嫌だな。
もやもやする。
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