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一瞬で笑顔

その日の放課後、僕一人教室に残り周さんを待つ。 一緒に帰ろうって言ってくれたから…… 迎えに来てくださいって伝えたから。 周さん来たらどうしよう。 無視した事、ちゃんと僕 怒れるかな? だってすごく嫌だったんだ。 僕だって怒ってもいいよね? 教室には、もう誰もいない。周さんはなかなか来ない。 僕は自分の席に座ったまま、周さんを待った。でも周さんが遅いから、ちょっと心細くなってきた。 もしかして忘れちゃったのかな…… 僕の事を避けていたから、またその調子で忘れちゃったのかもしれない。 僕は寂しくなってしまって机に突っ伏す。悶々と考えていたらそのまま眠ってしまった。 ふと頬に触れる温かな感触で目が覚めた。 僕の席の向かいに周さんが座っていて、僕の頬に手を添えている。 「あ……周さん。すみません、僕寝ちゃってた…… 」 寝起きのせいか、頭が働かない。 あれ? ここ教室…… あっ、そうだ。周さんを待っていたんだっけ。 「……ごめんな、竜太。 待たせちゃったな」 周さんが優しい顔をして僕に謝る。 「あ、いいんです。謝らないで下さい。別に急いでないし……」 鞄を取り、立ち上がろうとすると周さんに手を掴まれた。 ? 「ちょっと待って…… まだ… 」 何かを言いたげな周さんに引きとめられ、僕はまた席に着いた。 周さんが僕の両手を包み込むように握りしめる。 温かい手。 なんだろう。 周さんにジッと見つめられ、ちょっと照れくさかった。 「竜太……ちょっと事情があって竜太の事、避けてた。ごめんな。嫌な思いしたよな? 本当にごめん。俺さ、竜太が怒って俺の事無視するの、辛くて耐えらんねえ……謝るから……この通りだから許して。お願い」 僕の手を握ってる力が強くなる。 ギュッと伝わる周さんの気持ち…… 僕が周さんを無視したって言ったって、さっきの昼休みのちょこっとの時間だけじゃん。 たったあれだけの事で、周さんはこんなにも落ち込んじゃうんだ。 可愛い。 凄い嫌だったのに、めちゃくちゃ怒っていたはずなのに…… 周さんの顔を見たらそんなの一瞬で吹き飛んじゃった。 そんな自分が可笑しくて、思わず笑ってしまうと周さんは不思議そうな顔で僕を見る。 「……? どうした? 竜太」 やっぱり大好きなんだよな。 「ん〜ん、怒ってないです。でも僕だって周さんに無視されるのは凄く悲しいですからやめてくださいね……」 そう言うと、頬を両手で挟まれ軽くチュッとキスされた。 「ごめんな竜太。愛してる」 こんな所で恥ずかしい。 ……でも凄く嬉しい。 「僕もです」 僕らは久しぶりに二人で家に帰った。 結局、僕を避けてた理由は聞けなかったけど…… まぁ、いいか。 そのうちちゃんと聞くことにしよう。

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