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バレンタインデー
僕は周さんにチョコレートとちょっとしたプレゼントを用意していた。
今日は学校が終わったら、康介と一緒に一旦帰宅してからライブに行くことになっている。
僕は朝から楽しみで、ワクワクしていた。
初めてバレンタインデーだと意識した。好きな気持ちを再認識する。相手の喜ぶ顔が見たくて張り切ってしまう。きっと沢山の人がこうやってワクワクしながらチョコレートを用意しているんだろう。
登校すると、少し遅れて康介が教室に入ってきた。僕が おはようと声を掛けても浮かない表情の康介。
「どうしたの? 元気ないじゃん。大丈夫? 康介」
「………… 」
ジトッとした目で僕を見る。
「俺さ、心配になってきた。チョコなんかあげて、逆に嫌われるんじゃないかなって……」
「チョコ、失敗しちゃったの?」
「……ゔぅっ」
あれだけ練習しても成功率半々じゃぁね……でもそんな落ち込まなくてもいいんじゃない?
「失敗したって言ったってさ、チョコを溶かして固めただけでしょ? 元のチョコには変わりないんだから、形がどうであれ美味しいよ。気持ちがこもってるんだから大丈夫。ね? そんなに落ち込まないで。修斗さんだってわかってくれるよ」
とりあえずうなだれる康介を一生懸命慰めた。
口をへの字にしてショボくれていた康介も僕の言葉にちょっとは気持ちが晴れたのか、段々といつもの元気を取り戻す。
「だよな!……形なんて関係ないよな! 気持ちだ気持ち……修斗さんだってわかってくれるよね。うん…。大丈夫だ。頑張れ俺」
ちょっと単純回路な康介が可愛いな……なんて思う。
落ち込んだり元気になったり、よく僕のことを素直だって言うけど康介だってこういう所はとっても素直だ。
「あれ? 康介それなに?」
康介が手に持っている紙袋……
なんだか小さくて可愛い袋を二つ持っていた。
「ん? これさっき門のところで貰った……ああこれチョコだよな。男から、先輩から貰っちったよ」
苦笑いをする康介。
「凄いね! 康介モテモテだね」
ちょっと揶揄うように言ったら、肩を竦めて首を振る。
「今の俺はたとえ女からだろうとチョコなんて貰っても嬉しくないのだ。俺が欲しいのは、修斗さんからの愛のチョコ!」
また鼻を膨らませて得意げにそう言った。
「そうだね、貰えるといいね」
そう言いながら、僕も周さんから貰えるといいな……と少しだけ期待した。
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