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告白?

そのまま昼休みいっぱい周さん達の教室で過ごした。 教室内と廊下からの視線は相変わらずだったけど、僕は気にしないことにした。 今日は学校が終われば周さん達のライブだ。 康介と楽しみだって話をしてたけど、周さんと修斗さんはやっぱり僕らに来てほしくないからか、来たってしょうがないからやめとけよ……なんて言ってくる。 「バレンタインライブでしょ? オシャレして応援しに行きますからね 」 康介なんて鼻膨らませて張り切っちゃってるし。 ライブが終わったら修斗さんに手作りのチョコ渡すんだよね。 僕もこないだ買ったチョコとプレゼントを持って行くんだ。 楽しみだな…… 昼休みも終わるので、周さんと修斗さんと別れ康介と教室に戻る。 一年のフロアに戻ったところで、さっきの先輩が待ち構えるように立っていた。 「渡瀬君、ごめんね。ちょっといい?」 小さく僕に手招きしている。 「……康介、どうしよう」 僕が康介の腕を掴むと康介は僕の前に立ってくれた。 「なんすか?……竜に何か用?」 康介も喧嘩腰でその先輩のことを睨んでる。 「あ、ごめんね、脅かしてるわけじゃないんだよ。ちょっと渡瀬君と話したい奴がいて……何もしないから、一緒に来てもらえない? 出来れば一人で」 「………… 」 「俺も行きますから」 康介は僕を一人で行かせる気はないらしく安心した。 「しょうがないか……じゃあ、来て」 そう言って先輩は歩き出すので、僕らは二人でついて行った。 下駄箱から外に出てすぐのところに、また知らない先輩らしき人が二人立っている。 僕らを連れてきた先輩は、康介をそこに留まらせ、僕にあっちにいくよう促した。康介と離れて心細かったけど、見える場所だしそんなに遠くもないから、ドキドキしながらも僕はその人達に近付く。 僕が近付くと、そこで待っていた先輩二人は笑顔を見せた。 ……なんか、怖い事じゃないみたい。 不良っぽくて見た目が怖そうな人と、康介みたいな少し日焼けしたスポーツマンタイプの先輩。 「……僕に用って、何でしょうか?」 二人してなかなか話し出さないから、少しイライラしてしまう。 呼び出したのそっちじゃん…… 「渡瀬君、来てくれてありがとうな。橘がいるから見込みはないのわかってんだけどさ、これ…貰ってもらいたくて」 「なんか、ダメ元でみっともないんだけどよ。こういう事してみたかったんだよね。貰ってくれるかな?」 そう言って二人とも何かを僕に差し出した。 ? 戸惑っていると、ずいっとまた目の前に突き付けられ、僕は咄嗟に受け取ってしまった。 「ありがとな、渡瀬君!」 二人ともすごい笑顔で僕の前から去っていく。 振り返ると康介が待っていてくれた。 僕はよくわからなくて、どうしたもんかと考えながら康介の元へ行くと、康介がニヤニヤと変な笑顔を浮かべてた。 「なんだよ、康介気持ち悪い……」 「は? 気持ち悪いってなんだよ。先輩達何かと思ったら、告白かよ。ビビったわ……」 僕の肩をポンポン叩きながら、康介は教室に戻るぞ、と歩き出す。 「え? 告白??」 僕が言うと「そうだったんだろ?」と康介は振り返った。 「いや、なんかこれを僕に渡したかっただけみたい」 渡された紙袋を康介に見せると「ほら見ろこれチョコだよ」とはっきりと言われてしまった。 「そうなの? ……え? もしかしてバレンタインだから? 嘘でしょ? 僕に?」 周さんにチョコをあげることばっか考えてて、自分が他人から貰うなんてこれっぽっちも思ってなかったから驚いた。 「………… 」 ああ、だからあんな事言ってたんだ。見込みが無いとかダメ元とか…… 僕が周さんの事好きなの知っているから。 あの先輩達も僕みたいにワクワクしながら、喜んでもらえるかな? とか考えながらチョコを買ったんだろうか? 「ねぇ……康介。僕、このチョコ受け取ってしまってよかったのかな?」 僕にチョコを渡してくれた先輩達の気持ちを考えると、僕は受け取ってはいけなかったんじゃないかなって思った。 「へ? いいんじゃね? だって愛の告白じゃなくても友達同士とか、軽い気持ちでプレゼントする場合もあるし、深く考えなくてもいいって」 鼻で笑って康介が言う。 「……そう? そうなの? 僕チョコなんて初めて貰ったから……びっくりしちゃった」

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