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衝撃のサプライズチョコ
周さんが思った以上に喜んでくれて、ほんとによかった。
ベッドに腰掛けた周さんが両手を広げていつものように僕を呼ぶ。
その大好きな胸にギュッと顔を埋めた。
「あのな、俺からもあるんだ……その……チョコをな、竜太に……」
頭上から、しどろもどろな周さんの声が聞こえる。
……え? 今チョコって言った?
バッと顔を上げ、周さんの顔を見ると真っ赤になって僕を見ていた。
「周さんが僕にチョコ?」
「お、おぅ……」
まさか貰えるとは思ってなかったから驚いてしまった。
後ろに置いたバッグの中を周さんがゴソゴソしている。
「ん?……ん……あった。これ…… 」
周さんが取り出したのは四角い箱。
「……はいこれ」
照れてるのか、僕の顔も見ずに箱を突き付けてくる周さん。
……信じられない。周さんが僕にチョコ!
「開けてもいいですか?」
「んっ」
周さんはそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに返事をする。
僕はわくわくしながら慎重にその箱を開けた。
?!
「……これ! もしかして周さんが??」
箱の中におさまっていたのは、いかにも手作りですって感じのカップケーキ……らしきもの。
嘘でしょ? 周さんの手作り??
「俺が作った……初めてだから綺麗にいかなかったけど……な」
耳まで真っ赤にしながら周さんが答えてくれた。
凄い! 凄い! 凄い!
嬉しすぎて僕、どうにかなっちゃいそう!
「ありがとうございます!」
僕は周さんに抱きついてキスをした。
「竜太……嬉しい?」
「もちろん! すごく嬉しいです!」
周さんはやっと僕の顔を見てくれた。僕の反応に安心したように微笑んでくれる。堪らなく嬉しくてもう泣きそう。
「竜太……食べてみてよ」
周さんが自信なさげにオドオドしながら言うのが不思議な感じ。
……きっと緊張してるんだ。
僕は周さんに見つめられ、もう一度箱を開けて今度はじっくりと中を覗く。
ふわっと甘い香りが鼻をくすぐる…
甘い甘い……
……??
チョコレートの甘い香りよりも主張してくるこの強烈な甘い香りは……
まさかお酒??
「周さん? これ……」
「竜太、食べて……」
期待した顔で僕を見ている周さん。
「チョコのカップケーキ、少し隠し味に洋酒入れたんだぜ」
ちょっとドヤ顔でそう言って僕を見る。
そのドヤ顔も周さんにしては珍しくて、あまりの可愛さに僕の思考回路が停止しそう。
でも隠し味?
洋酒を少し……?
きっと、これ少しじゃない……
大量に入っちゃって、全く隠れてませんけど。
でも、こんなに可愛い顔して僕を見てる周さんを裏切るわけにはいかない。
ドキドキしながら、僕は周さんお手製のカップケーキにがぶりと食らいついた。
やっぱり……
物凄いアルコール感が鼻から一気に突き抜ける。もうこの香りだけで二日酔いになりそう。
でも、美味しい!
チョコレートの味より洋酒の感じが強いけど、嫌いじゃない味だから難なく完食出来た。
よかった……ちゃんと全部食べられた。
周さんを傷付けずに済んだ。
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