392 / 432
ほろ酔いチョコレート
竜太は自分の顔を俺の胸に埋めながらすりすりしてる。
なんだこれ……可愛すぎるだろ。
なんかモゴモゴ言ってるし……
……?
さっきから何喋ってんだろう?
「竜太?」
「あまねしゃん……好き、好き、しゅき……ふふふ」
「………… 」
俺の事が好きってひたすら呟いてた。
「ちょい? 竜太、風呂行く? どうする?」
しがみ付いて離れそうにない竜太に俺は聞く。まさか酔っ払ってる? 俺のチョコケーキ食って? 酔っ払うほど酒入れたっけか? でもこれは間違いなく酔っ払っている。
竜太は俺が言ったことが分かってんのか、そのままの姿勢でコクコクと頷いている。俺は腰にしがみ付く竜太と一緒に風呂場へなんとか移動して、湯船に湯を張るために蛇口をひねった。
再びベッドに戻ると顔をあげた竜太が俺の上に跨ってきて、頬やら額やら俺の顔中キスを降らせる。
なんなんだ?
竜太、どうしちゃったんだよ……
積極的な竜太……嫌じゃないし、むしろ嬉しいけどさ。
「竜太? ちょっとちゃんと顔見せて…… 」
俺に跨り見下ろしてる竜太の両頬を手で挟み込みひき寄せる。「あ…」って小さく竜太は声を上げると体を強張らせ、引き寄せられまいと抵抗してきた。
「なんれすか? 周さん……!」
「竜太、俺のカップケーキで……もしかして酔った?」
俺が聞くと、小刻みに首をブンブンと振り否定する竜太。いやいやどう見たって酔ってるだろ。
「酔ってません! ……ダイジョーブれす! おいしかったですっ!」
深妙な面持ちで呂律が可笑しいもんだから、思わず吹き出してしまった。
俺が笑ったことで気を悪くしたのか、竜太は少しプウッと頬を膨らませて怒っている。
竜太、俺に気を使ってくれてんだな……
俺、ブランデーどんだけ入れればいいかわかんなくて、多分たくさん入れちまったんだ……
それなのに、俺をがっかりさせまいと無理して食ってくれたんだ。
……優しい。
「竜太……ごめんな、ありがとう」
ぎゅっと抱きしめると、「あまねしゃん……」って頼りない声を出して竜太も抱きしめてくれた。
とりあえず、自分を見失うほどには酔ってないみたいだから大丈夫かな?
「一緒に風呂入ろっか?」
「………… 」
ちょっとの沈黙……なんだこれ?
「えぇ? だめです! 恥ずかしい。でも、いいですよ。一緒に入りましょ。 あまねしゃん……泡泡して洗ってくらさい。ふふ…… 」
「………… 」
普段の恥ずかしがり屋は残りつつ、酔っ払ってるお陰で少しおかしくなってるらしい。
なんだかこんな竜太も可愛くて堪らん。
あ、そうだ!
「竜太? 足どうすんだ?」
もうスムーズに歩けているけど竜太の足にはまだギプスが付いている。
「んふ……専用のカバーね、持ってきたんでーす。あまねさんとお泊まりになってもダイジョーブなように。ふふふ… 」
いそいそとバッグから袋を取り出し、中からカバーを出す竜太。
しかもその後、ベッドに腰掛けたまま竜太はその足をピーンと俺に向けて伸ばしてきた。
カバーをヒラヒラさせながら「はい周さん、足に付けてください」と、俺を見つめてにっこりと微笑んだ。
ちょっと……なんだよ俺がやんの?
戸惑ってると、竜太は足を俺の方へ向けたまま甘えた声を出す。
「あまねさん……はやくぅ」
なんだよ、可愛いなクソッ!
しょうがないから俺は竜太の前に跪き、丁寧に足にカバーを着けてやった。
ともだちにシェアしよう!