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チャンスをちょうだい
「……仲いいですよ? なんでそんな事聞くんですか?」
思わずムスッとした言い方になってしまい自分でも少し焦ったけど、凪沙はそんな事を気にする様子もなく話を続けた。
「あっくんはさ……今彼女、いるのかなぁ。彼女じゃなくても好きな人とか……さ」
俯きながら小さな声で言う凪沙に、僕は予想はしていたけどやっぱり動揺してしまい返事をするのを躊躇ってしまった。
凪沙は僕の返事を待たずに、また話し始めた。
「中学の頃さ、付き合ってたんだよねあたし達。でも、あたしがあっくん以外の人とも仲良くしてたから……あっくん怒っちゃって」
凪沙は少し黙り込んでから、小さく首を振る。
「……違う、あたしが浮気症でどうしようもなかったから呆れたんだよね。それで兄貴達も出てきて色んな事がこじれちゃった……」
ため息を吐いて俯く凪沙に何をどう話していいのかわからず、僕はただ黙って聞いていた。
「竜太君、あたしさ……別れてからやっとわかったんだよね。あっくんのこと好きなんだなって。あの時さ、たまたまあっくん見かけて、嬉しくて舞い上がっちゃって。付き合い初めの頃を一気に思い出しちゃった」
凄くいい顔をして微笑む凪沙の顔を、僕は見ていられなかった。
「ごめんね、あの時は妙にテンション上がっちゃって失礼な態度だったよね。図々しかったし……てかあれがあたしの本性みたいなもんなんだけどね」
そう言って自嘲気味に凪沙が笑う。
「………… 」
チラッと僕の方を見る凪沙と目が合った。
「あの時のあっくんの態度を見て、もうどうしようもなく嫌われちゃってるのはわかってる……知らなかったとはいえ、修斗にも酷いことしちゃったし」
え……?
修斗さんに酷いことってどういう事?
「竜太君お願い! あたしに協力して! ……無理言ってるのはわかってる。でももし今あっくんに彼女がいないのなら、せめて友達でもいいから……また仲良くなりたいの! お願い…… 」
「………… 」
無理だよ……やめて……
それ以上、言わないで。
「お願い……あたしにチャンスをちょうだい」
やだ……
そんな顔で僕の事、見ないで!
僕が返事に困っていると、遠くで凪沙を呼ぶ声が聞こえた。
「あ……兄貴」
気のせいか、少し顔色を変えた凪沙が慌ててベンチから立ち上がる。
「竜太君ごめんね、あたしもう行くね……また連絡するから!」
それだけ言うと、凪沙はお兄さんらしき人のところへ駆けて行った。
公園の入り口に立つ二人の男の人。そのうちの一人と目が合った。
ちょっと怖そうな顔つきのその男の人と並んでいるもう一人も、まるで鏡のように同じ顔をしていた。
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