407 / 432
胸が騒つく
修斗さんに相談した俺は、凪沙よりもその兄貴たちが危ないんだと教えてもらった。
凪沙って奴も相当だけど、そんな凪沙を溺愛してるのが双子の兄。凪沙に何かあるとすぐに出てきて問題を起こす。
修斗さんも凪沙にモーションをかけられ、断っただけで軟禁され酷い目にあったって俺に告白してくれた。
「………… 」
酷い目にって、何されたんだよ。
修斗さんは、俺にはその話はしたくなかったみたいで苦い顔をした。そのまま俺からそっぽを向いて黙ってしまった。
「修斗さん?……嫌な事思い出させちゃってゴメンなさい。なあ、こっち向いて……」
教室に戻った俺たちは窓際の席に向かい合って座り、話をしていた。
外を向いてる修斗さんの横に俺は移動して肩に手を置き静かに言う。
もうこの時間は教室には誰もいない。
修斗さんは俺の方を向き直り、俯いて言った。
「あいつらさ、バイなんだよ……何でもする。もし竜太君と何かの接点が出来てあいつらも出てきたら本当にヤバいって」
……バイ?
バイって何だっけ?
なんか聞いたことのある単語。
「……バイって?」
修斗さんはポカンと俺を見る。
「バイは異性でも同性でもいける奴のこと……だから、俺が軟禁された時も、俺らに犯されたくなかったら凪沙とヤれって……」
恐ろしいことを修斗さんが俺に言った。
マジかよ!
「修斗さん! ヤられたの? そいつらに! ……ムカつく! そいつらどこにいんの? 俺が…… 」
「落ち着けよ! ヤられてないから……康介、大丈夫だったから。な? ずっと前の話だし、それにすんでの所で周が助けてくれたから……」
「………… 」
俺は修斗さんの体を抱きしめた。
「ちょっと? 康介?……どうした?」
この人ってば……
「もう……修斗さん、強いくせにすぐ油断して……危なっかしいじゃないですか。俺、心配だよ……」
修斗さんは俺の知らない所でどれだけ危ない目にあってるんだ?
本当に心配でたまらない…
「康介。大丈夫だよ。ごめんな、変な事言っちまった。俺の事は気にすんな。昔のことだし、あんな事滅多にあるもんじゃないから……」
俺の腕の中で修斗さんがゴニョゴニョと言っている。
「修斗さん、俺……修斗さんの事心配だからさ、ずっと一緒にいるから。いつも周さんにばっか助けてもらいやがって……今度からは俺が助けるんだから」
ギュッと抱きしめる腕に力を込める。こんな事にもやきもち焼いて笑われるかもしれないけどそんなのどうだっていいい。
腕の中を見ると修斗さんが真っ赤な顔をしてるのが見えて、堪らなくなってキスしてしまった。
「ここどこだと思ってんだよ。それに康介そんな強くねえだろ? 助けてもらわなくたって平気だよ。生意気言ってんな……」
「修斗さん、そんな赤い顔して説得力ない。可愛い」
俺から離れようとした修斗さんをもう一度捕まえ、少し強引にまた俺はキスをした。
「……康介のバカ。帰るぞ」
赤い顔のままの修斗さんがそう言い、俺たちは教室を後にした。
俺は部活をしている竜の様子を見てくると修斗さんに伝え、美術室に向かった。
美術室に着くともう電気も消えていて誰もいなかった。
あれ? 竜はどうした?
携帯のメールをチェックすると、だいぶ前に竜からのメールが届いていた。
『先に帰ってるね。修斗さんとごゆっくり』
着信は結構前だから、もう家に帰っててもおかしくないよな?
修斗さんの待つ教室に戻りながら、俺は竜の家へ電話をかけた。
おばさんも出掛けてるのか、誰も出ない。
ちょっと胸がざわつく……
教室の机の上にちょこんと腰掛けてる修斗さんに竜が先に帰ってしまったと伝え、俺達は二人で学校を出た。
ともだちにシェアしよう!