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諦めなよ

「ちょっと海成さん、痛いじゃないですか! やめてください」 僕が海成さんを睨むと、ニヤニヤとこちらを見ていた航輝さんが話し出す。 「ごめんなぁ、海成も俺も気が短けぇんだ。ちょっとイラついちまった……竜太君よ、凪沙は何を頼んだんだ?」 しつこいな……まだ聞くの? 「いくらお兄さんだからって言えませんよ。凪沙さんのプライバシーの問題。凪沙さんの口から直接聞いてください」 「竜太君さ、痛いの嫌だよね? 何で凪沙の肩持つの?……もしかして凪沙の事好きなんじゃねえよな?」 もー! バカじゃないの? そんなわけないじゃん! 「その好きって恋心って意味の好きって事ですか? それなら好きじゃないですよ! もういい加減にしてください! 僕、帰ります」 そう言って立ち上がろうとすると、海成さんに腕を掴まれて引っ張られてしまい、よろけた拍子に倒れこんでしまった。 「竜太君、帰れないって言ったよね? 聞こえなかった?」 海成さんが怖い顔をして僕の上に跨った。 「ちょっ……! どいてください、重たい! ……やだ、触るな! 」 海成さんから逃れようともがいても、ビクともしない。 その上、僕の頬をスルスルと撫でるもんだから気持ちが悪かった。 「俺たちはさぁ、可愛い凪沙の事が心配なんだよ。泣きそうになってんのにほっとけないだろ? 凪沙はお前の事が好きなんじゃねえのか? お前が付き合えないって断ったから元気ないんだろ? 違うか?」 今度は僕の頬をペチペチと叩きながら海成さんが話した。 ……勘違いにもほどがある。 「違います! 勝手に想像して勘違いしないでください! 凪沙さんが好きな人と僕の好きな人が同じだから、だから協力出来ないんです!」 「………… 」 「………… 」 ……あ、興奮して思わず喋ってしまった。 「なあ竜太君よ……今何つった? 凪沙とお前の好きな人が一緒? ……凪沙は別にレズじゃないから……そっか、そういう事ね」 航輝さんが僕の顔をニヤリと見ると、上に跨ってる海成さんも僕の顔を見下ろした。 「じゃあさ、竜太君がその好きな人を諦めれば問題ないよね? ……諦めなよ。俺らが傷モノにしてあげるから。元々見込みないんでしょ? 男同士だし」 へ? ちょっと! 言ってることがわけわかんない! 見込みが無い? そうじゃないもん! もう付き合ってるんだもん! そんな事を思っていたら、僕の上に跨る海成さんが僕のシャツの裾から手を入れてきた。 「あっ? ちょっと!……やめてください! んっ! 痛いっ!」 直接乳首をつままれ、強く抓られる。 痛みに顔をしかめると、海成さんの顔が近づいてきた。 「ちょっ! やっ! ……やめっ!」 海成さんにキスされそうになり、慌てて顔を背けた。 それでもそのまま海成さんは、僕の首筋に吸い付き軽く噛み付いて来た。 慌てて僕は海成さんの腿を押し退け、体を退かそうと試みるけどビクともしない。 近くでは航輝さんが笑っている。 「竜太君、見た目通り力無いよね。もがいても全然動かないの、笑っちゃう」 ……うるさい! 「やだ! 退いてよ! やめてくださいっ!」 「もー、うるさいよ……竜太君。ちょっと航輝、アレ取って」 航輝さんが海成に言われ変なのを持ってこっちに来る。 凄い嫌な感じ…… 「やだ! やめて…… 」 僕がそう言ったと同時に玄関のドアがバンっと開いた。

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