408 / 432
諦めなよ
「ちょっと海成さん、痛いじゃないですか! やめてください」
僕が海成さんを睨むと、ニヤニヤとこちらを見ていた航輝さんが話し出す。
「ごめんなぁ、海成も俺も気が短けぇんだ。ちょっとイラついちまった……竜太君よ、凪沙は何を頼んだんだ?」
しつこいな……まだ聞くの?
「いくらお兄さんだからって言えませんよ。凪沙さんのプライバシーの問題。凪沙さんの口から直接聞いてください」
「竜太君さ、痛いの嫌だよね? 何で凪沙の肩持つの?……もしかして凪沙の事好きなんじゃねえよな?」
もー! バカじゃないの? そんなわけないじゃん!
「その好きって恋心って意味の好きって事ですか? それなら好きじゃないですよ! もういい加減にしてください! 僕、帰ります」
そう言って立ち上がろうとすると、海成さんに腕を掴まれて引っ張られてしまい、よろけた拍子に倒れこんでしまった。
「竜太君、帰れないって言ったよね? 聞こえなかった?」
海成さんが怖い顔をして僕の上に跨った。
「ちょっ……! どいてください、重たい! ……やだ、触るな! 」
海成さんから逃れようともがいても、ビクともしない。
その上、僕の頬をスルスルと撫でるもんだから気持ちが悪かった。
「俺たちはさぁ、可愛い凪沙の事が心配なんだよ。泣きそうになってんのにほっとけないだろ? 凪沙はお前の事が好きなんじゃねえのか? お前が付き合えないって断ったから元気ないんだろ? 違うか?」
今度は僕の頬をペチペチと叩きながら海成さんが話した。
……勘違いにもほどがある。
「違います! 勝手に想像して勘違いしないでください! 凪沙さんが好きな人と僕の好きな人が同じだから、だから協力出来ないんです!」
「………… 」
「………… 」
……あ、興奮して思わず喋ってしまった。
「なあ竜太君よ……今何つった? 凪沙とお前の好きな人が一緒? ……凪沙は別にレズじゃないから……そっか、そういう事ね」
航輝さんが僕の顔をニヤリと見ると、上に跨ってる海成さんも僕の顔を見下ろした。
「じゃあさ、竜太君がその好きな人を諦めれば問題ないよね? ……諦めなよ。俺らが傷モノにしてあげるから。元々見込みないんでしょ? 男同士だし」
へ? ちょっと!
言ってることがわけわかんない!
見込みが無い?
そうじゃないもん! もう付き合ってるんだもん!
そんな事を思っていたら、僕の上に跨る海成さんが僕のシャツの裾から手を入れてきた。
「あっ? ちょっと!……やめてください! んっ! 痛いっ!」
直接乳首をつままれ、強く抓られる。
痛みに顔をしかめると、海成さんの顔が近づいてきた。
「ちょっ! やっ! ……やめっ!」
海成さんにキスされそうになり、慌てて顔を背けた。
それでもそのまま海成さんは、僕の首筋に吸い付き軽く噛み付いて来た。
慌てて僕は海成さんの腿を押し退け、体を退かそうと試みるけどビクともしない。
近くでは航輝さんが笑っている。
「竜太君、見た目通り力無いよね。もがいても全然動かないの、笑っちゃう」
……うるさい!
「やだ! 退いてよ! やめてくださいっ!」
「もー、うるさいよ……竜太君。ちょっと航輝、アレ取って」
航輝さんが海成に言われ変なのを持ってこっちに来る。
凄い嫌な感じ……
「やだ! やめて…… 」
僕がそう言ったと同時に玄関のドアがバンっと開いた。
ともだちにシェアしよう!