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邪魔者

玄関のドアが開いて、そこに誰かが立っている。 首をそっちにグイッと向けて確認すると、そこに立っていたのは凪沙だった。 一瞬僕の頭には周さんが浮かんで……でもそこにいたのは凪沙だとわかった瞬間ガッカリする。 「ちょっと……何やってんのよ!」 凪沙が兄二人に大きな声で怒鳴った。 航輝さんも海成さんも、凪沙を見るなり柔らかな笑顔に戻った。 それでも海成さんは僕の上に跨ったままだ。 「おかえり、凪沙。お前が元気がないからさ、竜太君に理由聞いてたんだよ……」 「何でそんな事すんのよ! 余計なお世話!」 「………… 」 兄妹喧嘩はいいから、早く僕を解放してほしい。 「でもよ、こいつ邪魔者だぜ? 凪沙の好きな奴とこいつの好きな奴が同じなんだとよ。だからさ、こいつヤっちゃえば凪沙に対抗する気無くすかと思ってさ」 何だよそれ、別に対抗してるわけじゃない。 「……竜太君、ほんと?」 凪沙が怪訝な顔をして僕の方を見る。 バレてしまったんならしょうがない、黙っているのも凪沙に悪いと思い僕は正直に白状した。 「ごめんなさい。僕も好きだから……どうしても協力出来なかったんです。黙っててすみません…… 」 僕の言葉に凪沙の顔が瞬時に曇った。 「……はぁ? 何よそれ。あんたも好きって何? どういう事? 嘘でしょ? 気持ち悪い! ……兄貴達の言う通りだわ。竜太君、邪魔!」 凪沙が僕の事を上から睨んでいる。 「兄貴達、竜太君どうするの? 痛めつけちゃってもいいよ」 凪沙が怒るのはわかるけど…… でも間違ってる! 「凪沙さん! 違うよ! 僕をどうにかしたって変わらない。自分が嫌われてるってわかってるのに……何でこれ以上嫌われちゃうような事をするんですか? こんな事したって好きになんてなってもらえない! ……凪沙さん、そんな事もわからないんですか!」 こんな強引な事をしたってしょうがない事、何でわからないんだろう…… きっとこの人、ずっとこうやって来たんだ。 周さんの事好きなんでしょ? 嫌われてるって自分でわかってても、仲良くなりたかったんでしょ? ……なんだか悲しい。 「凪沙さん! また仲良くなりたいんですよね? こんな事したら……こんな事したら、ますます嫌いになられちゃう! 好きなんですよね? だから僕に話しかけてきたんですよね? 必死だったじゃないですかっ! なんで? ……なんでわからないの? こんな事しちゃダメだ!」 「………… 」 真っ赤な顔をした凪沙が僕のことを睨んでいる。 「竜太君、うるさいよ〜。ちょっと黙っててもらおっか。ご近所迷惑になるからね」 僕の頭の横にいた航輝さんが、さっき持ってきた革紐みたいなものに玉が付いた変な物を海成さんに手渡し、海成さんがそれを僕の口元に当てがった。その得体の知れない物に気を取られていたら、航輝さんに両手首を掴まれそのまま拘束されてしまった。 僕は頭上で両手首をバッテンにした状態でビニールテープみたいなものでグルグルと固定され、腿の上には相変わらず海成さんが跨っている。 「あっ……やらっ……やへれ……」 海成さんが変な玉を僕の口の中へ押し込んできて、繋がった紐で頭に固定するから僕は上手く喋れなくなってしまった。

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