412 / 432

竜太の携帯

修斗さんと一緒に下校途中、やっぱり竜が気になってもう一度電話を入れてみた。 自宅にかけても相変わらず誰も出ない。おばさんはともかく、竜がまだ帰ってないのは遅すぎる…… 俺は不安になって横を歩く修斗さんの顔を見た。 「ん? どうしたの? 康介……変な顔……」 「変な顔ってなんすか! もう、そうじゃなくって……」 俺の顔を覗き込んでる修斗さんが可愛く笑う。この不安な気持ちは気のせいであってほしい……何でもない、俺の思い過ごしだったらいい。 「変っていうか康介、深刻な顔してどうしたの?」 「………… 」 はじめっからそう言って欲しい。この人俺が真面目な顔してると取り敢えず揶揄うんだよな…… 「竜が電話に出ないんですよ。ひとりで寄り道もないだろうし……まだ帰ってないってのが何だか気になっちゃって…… 」 「竜太君の携帯は?……かけた?」 修斗さんに真顔で言われ、慌ててもう一度竜の携帯にかけてみる。 しばらくコール音が続いてから、やっと竜が出てくれた。 「おい、竜……今どこ? ひとり?」 「………… 」 ……え? あれ? 泣いてる? てかさ…… 「もしもし? 誰だお前! 竜はどうした!」 電話に出たのは竜じゃなかった。 相手は何も話さなかったけど、鼻を啜る音が聞こえる。きっと電話の人物は泣いているんだ。 でも竜じゃない…… 背筋がゾッとした瞬間、修斗さんに携帯を奪われた。 「おい! ……あ? 凪沙か? ……あぁ、…うん、うん……そう、修斗だ。お前今どこだ? ……ん……ん……うん、わかった……わかったから、そこにいろ。竜太君の携帯はお前が大事にもってろ、な?」 電話を俺に戻した修斗さんが、早歩きしながら自分の携帯でまた電話をかける。 なに? 今のって、例の凪沙だったのか? 「……修斗さん?」 電話を耳に当てた修斗さんは、俺の顔を振りかえり、手のひらを俺に向けて「ちょっと待ってて…」というジェスチャーをする。 「あ…… 周か? お前今どこ? ……またあの双子だ……あぁ、竜太君が……今向かうから……ん……うん、……そう、アパート……」 修斗さんは携帯をポケットにしまうと「康介行くぞ… 」と、今までに見たこともない怖い顔をして俺に言った。 え…… 竜に何かあったのか? 「修斗さん……竜に何が…… 」 「周が向かってるから、大丈夫……大丈夫! ……間に合う…… 助けるから!」 は? 助けるからってなんだよ! また竜は危ない目にあってんのかよ。 走り出した修斗さんを俺は必死で追いかけた。

ともだちにシェアしよう!