416 / 432

号泣

部屋に入ると周さんは黙って風呂場へいき、湯船に湯を張る。 タオルを取り出しそれを軽く濡らすと、僕の顔に押し付けてきてゴシゴシと擦った。 「うっ!……周さん? ちょっと……痛いっ…… や、やめて…… 」 少し乱暴に顔を擦られ、僕は抵抗して腕を掴む。 タオルを退かし、周さんの顔を見ると目に涙が溜まっていた。 「竜太……もういいぞ。お前、俺の前では我慢すんな。竜太らしくねぇ……」 「………… 」 その周さんのひと言で、僕の我慢は一気に限界にきてしまった。 周さん、わかってたんだ。 ごめんなさい── こんな事になってしまって、周さんが悲しむのが嫌だから……少しでも周さんが辛くないように、僕は大丈夫、大したことないよ……って。 周さんが来てから僕はずっと泣くのを我慢していた。 僕が泣いていたら、ますます周さんが辛くなる…… 周さん悲しまないで……怒らないで……僕は大丈夫だから。 こんなの大したことじゃない。 でも…… 「周さん……怖かった……怖かったよ……怖かった!……周さん……怖かったよ!……来て……くれて……よかった…… ゔぇぇん… 」 僕は周さんの胸にしがみつき、子供のように泣きじゃくってしまった。 堰を切ったように溢れてくる涙を止められなかった。拘束され、目隠しをされた恐怖を思い出して、体の震えも止まらない。 僕は周さんにしがみつき、顔をその胸に埋める。 周さんはそんな僕を、黙ってずっと抱きしめてくれていた。 周さんの大きな手が僕の頭を撫でる。 周さんの優しい手が僕の背中を摩ってくれる。 大好きな周さんに僕の全部をすっぽりと包んでもらいたくて、ぎゅうぎゅうと周さんにしがみつき、僕はいつまでも声を上げて泣いてしまっていた。 どれくらい泣いていたんだろう。 周さんは優しくただ抱きしめてくれ、段々と気持ちが落ち着いてくる。 あ…… 周さんの胸が僕の涙でぐちょぐちょだ…… ちょっと恥ずかしくなってきて、僕は涙でベトベトな周さんの胸を指先で撫でた。 「……竜太? 少しは落ち着いたか?」 僕の頭にキスを落としながら、周さんが聞いてくれる。 「はい。すみません……僕、バカみたいに泣いてしまって…… 」 何となく顔を上げられない。 「そんなの、いちいち謝んな。風呂一緒に入ろ…」 周さんに言われて僕は小さく頷いた。 周さんに肩を抱かれるようにして……というか、僕が周さんから離れたくなくて腰にしがみついたまま、バスルームへと歩く。 周さんは何も言わず、僕の服を脱がせてくれて、シャワーでお互いの体を流した。

ともだちにシェアしよう!