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最後の
「周さん?……僕は周さんと一緒にいますよ? そんなに落ち込まないでください。僕のこと、ちゃんと見て…… 」
僕まで悲しくなってしまい、周さんにギュッと抱きつく。すると周さんが僕の事を包み返してくれた。
「そうだよな……なんかゴメン。心配かけたよな? 俺、圭さんの事大好きだからさ……置いてかれちまうのもなんだか嫌で。多分陽介さんともちゃんと話し合ってお互い納得の上なんだろうけどさ、なんで別れる必要あるんだろうな。あぁ……なんかよくわかんなくなってきた……」
周さん……圭さんの事大好きってちょっとヤダけど。
軽く圭さんにヤキモチを妬いたけど、周さんの元気が無かった原因がわかってホッとした。
きっと陽介さんも、周さんたちがバンドを解散しないで黙って圭さんを待つように、圭さんには別れると言いながらもちゃんと待ってるんだろうな……ってそう思った。
「周さん、明日はちゃんと学校行ってください。出席日数足りなくなって進級出来なかったらどうするんですか? あと少しなのに…… 」
僕がそう言うと、思い出したようにハッとして笑顔を見せた。
「やべ……そうだよな。俺出席日数ヤバいんだった。でも進級出来なかったらさ、竜太と同じ学年かぁ。それも悪くないな 」
僕にキスをしながらそんな事を言う。
「はぁ? ダメですよ! そんなの僕が許しません! ……周さんと同級生も嬉しいけど……でもダメですからね。ちゃんと三年生になってください」
二人で顔を見合わせ笑った。
よかった……周さんちょっとは元気になったかな。
次の日からはちゃんと登校してくれて、普段通りの周さん。
いつもの日常に戻る。
今日もお昼休みは康介達も一緒に屋上で過ごした。
コロッと変わって元気になってる周さんを見て康介は不思議そうな顔をしているけど、修斗さんは全く気にせずにパンを食べてる。
「なぁ修斗……お前康介には話したのか?」
「ん? 今度のライブの話? ……してあるよ」
モグモグしながら修斗さんが目も合わさずに簡単に答える。
「そっか……竜太にはまだ言ってなかったけど、卒業式の次の日俺らのライブあるから。康介と一緒に来な」
そう言って僕の頭をフワッと撫でた。
それってもしかして……
僕は周さんを振り返る。
「そう……俺ら四人での最後のライブだ」
少し寂しそうに周さんが言った。
康介は周さんの言葉にキョトンとしている。でもすぐにハッとした顔をして怒鳴った。
「何? 四人で最後のって! へ? どういう意味?」
修斗さん……大事なこと言ってないんじゃん。康介の狼狽えっぷりが酷くて、僕も周さんから聞かされた時のショックを思い出してしまい泣きそうになってしまった。
「康介悪い、解散の事は言ってなかったよな……俺ら、圭さん達の卒業で解散すんだよ」
口をあんぐりと開けたまま固まってしまった康介。
「でも、解散っつっても続けるよ。俺と周と靖史さんでスリーピースバンド……っておい? 康介? 聞いてる?」
固まったままの康介が、震える声で話し出す。
「ねぇ……修斗さんと周さんと靖史さんで三人でって、圭さんは? 解散の理由って、もしかして圭さんですか? 圭さん、どっか行っちゃうの?」
康介ちょっと涙目だ。
「ああ、圭さんは卒業と同時に親父さんのとこに戻るんだと。だからいつ帰ってこられるかわからないから、解散してくれってさ」
修斗さんは康介の隣に座り直して顔を覗き込みながら優しく話した。
俯いた康介の足元に小さな雫が落ちる。
「だからだったんだ……ここんとこ兄貴の様子が変だった……あいつ、何でもないよって言ってたけど……何でもなくないじゃんか。何でそんな大事なこと言ってくんねぇんだよ。そんなに弟って頼りないのかよ……」
修斗さんが、康介の肩を抱く。
「頼りないんじゃなくてさ、弱いとこ見せたくねぇんだよ。陽介さん、辛いだろうな……康介、陽介さんの事責めんな。大丈夫なフリしてる陽介さんにちゃんと付き合ってやれよ……ほら、お前が泣いてどうすんだよ」
修斗さんに言われて、康介はゴシゴシと制服の袖で目元を擦った。
「顔洗ってくる……すみません」
鼻まで赤くした康介は、そう言って屋上から出て行ってしまった。
「ゴメンね、竜太君。康介の事……いいかな? 正直さ、みんな寂しく思うのは同じなんだよ。でも俺らまでしんみりしてちゃダメじゃんか……康介の事だからすぐに元気になると思うけど、気にかけてやって 」
寂しそうな顔をした修斗さんに言われて、僕は早めに教室へ戻った。
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