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笑顔で
教室に戻ると、机に突っ伏してる康介の姿が目に入る。
今はそっとしておいた方がいいかな。僕だって昨日聞いたばっかで、まだショックなのには変わりない。
圭さんがいなくなっちゃうのもそうだけど、陽介さんと別れるって……だってさ、嫌いで別れるんじゃないでしょ?
康介はきっと辛そうな陽介さんを日々見ていたから……その理由がわかって悲しいんだよね。
午後の授業の間中も、康介は机に突っ伏したままだった。
先生が何度か声をかけてたけど、康介は無反応だからその後は諦めて先生は黙っていた。
大人しい先生でよかった。
放課後僕は康介に声をかける。
「大丈夫? 一緒に帰ろ……下校時間だよ」
むっくりと顔を上げた康介は、涙は乾いているもののやっぱり元気がない。
「うん、帰る……今日竜の家に寄らせて」
僕らはあまり会話もせず、黙って帰宅した。
康介は僕の部屋に入るなり、聞いてきた。
「竜は知ってたの? 解散の話……」
「うん……でも僕も周さんから聞いたのは昨日だよ。驚いたよ……でも解散の事より……陽介さんは大丈夫なの?」
康介の目がまた潤んでくる。
「兄貴の奴さ、ここ数日家で飯食ってねえんだ。ほとんど圭さんちだからそっちで食ってんのかと思ってたけどさ……痩せてんだよね、てかやつれてる? 顔色悪いし家にいるときは部屋にこもってるし会話もしないし……なんか心配で声かけても、何でもないよって作り笑顔バレバレだっつうの」
康介……
「でも、僕らにはわからないけど……きっと二人でも話し合って決めたんだと思うし。辛いけど、笑顔で見送りしないと……だよね」
僕は康介の頭を抱いてやり、できるだけ優しく背中を摩りながらそう言った。
「康介が泣いてちゃダメだよ。陽介さんまで悲しくなっちゃう。陽介さんだってきっと泣きたいの我慢してる、見せないようにしてると思う。修斗さんも言ってたじゃん……元気出して康介」
ぐずぐずと康介は僕の腕の中で泣いている。
僕の存在は康介の慰めになってるだろうか……
いつも僕の事を心配してくれたり励ましてくれていた康介。
……僕は頼りなくてごめんね。
そんな事を思いながら、康介の背中を撫でていたら、ぼそぼそと何かを喋っていることに気がついた。
「……今日まで、泣くのは今日まで……もう大丈夫。明日からはいつも通り!」
そう言って顔を上げる康介。
「……大丈夫?」
僕が話しかけると、頬を濡らしたままの康介がいつもの笑顔で頷いた。
「うん、もう俺泣かない。俺が泣いてたってしょうがねぇもんな。兄貴イラつかせるだけだし……」
そう言いながら僕の腕から抜け出して、かわりに僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「竜、ありがとな……癒されたよ。元気出た」
康介が笑顔でそう言うので、僕はちょっと安心した。
吹っ切れたような顔で康介は自分の家へと帰って行き、次の日からはいつも通りの康介に戻ってくれた。
卒業式まで僕も普段通りに過ごすように心掛けよう……
康介に泣かれちゃって……僕、泣きそびれちゃったな。
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