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触れられない話

スタジオ練習の後、みんなで食事をした。 スタジオの側のファミレス。少しだけ遅れて康介も合流した。 「康介、お疲れ様。こっちおいで」 修斗さんに促され、康介は修斗さんの隣にちょこんと座った。 「竜太君がスタジオ来るのって珍しいよね。今まであまりなかったと思うんだけど」 圭さんが、サラダを突きながら僕に話しかける。 康介は修斗さんと一緒によく来ていたらしいけど、そういえば僕は来たことなかったな。周さんが放課後バイトの事が多くて一緒にいる事も少なかったから…… でも、最後にこうやってみんなと過ごせて本当に良かった。 「修斗さん、誘ってくれてありがとうございます」 僕は修斗さんにお礼を言った。 「いいよ別に、俺も竜太君とデート出来て嬉しかったし」 「なんだよ、デートって」 康介が怖い顔で僕を見た。ちょっと? 康介がバイトに行くのに僕が修斗さんをお茶に誘ったんじゃん……なんで睨むんだよ。寧ろお礼を言って欲しい。 康介に向かって修斗さんがわざとらしく笑って言った。 「だって康介が俺の事相手してくんねえんだもん。竜太君が誘ってくれなかったら寂しくてどうなってたか……」 言い返せなくなってしまった康介は赤い顔をしてブスっとしてしまった。 「もう、そこ! 痴話喧嘩うるさいから……康介君注文したの? みんな食い終わっちゃうよ」 圭さんに言われて慌てて康介は注文をした。 僕はたらこソースのパスタの後にデザートを頼んであったので、届いたそのハーフサイズのミニパフェを頬張る。 それを見た康介に「またそんなもん食べて太るぞ」と、揶揄われた。 僕らは夕食を済ませ、少しの間みんなで楽しくお喋りをして過ごす。 他愛ない話から靖史さんの彼女の話…… 陽介さんの卒業後の進路の話……と、三年生の卒業メンバーの話になった。 靖史さんは実家の酒屋の手伝い、陽介さんは美容の専門学校へ進学するんだって。 陽介さん、よく圭さんの髪のカットやカラーもしてるって康介が言っていた事があって、恋人同士でそういうのってなんかいいなぁって思ってたんだ。 陽介さんは卒業したらちゃんと学んで、美容師になるんだって。 だから、専門学校に入学したら康介を実験台にするって、冗談半分で康介を揶揄って笑った。 そして今度は圭さんの話…… 「俺は元気でやってくから」 簡単に圭さんはそう言うと、すぐに話題をそらしてしまった。 「………… 」 「圭さんいなくなっちゃうの、寂しいです」 なんだかみんなも圭さんの渡米に関してあまり触れないような態度だった。 でも僕はそれが嫌で……思わず自分の気持ちを少しだけ溢してしまった。 きっとしんみりしちゃうのが嫌だから、圭さんもみんなもその話題に触れないように、触れてもサラッと流そうとするんだ。 でも僕は黙っていられなかった。 しんみりさせてしまってごめんなさい。 「僕は寂しいです……」

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