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第5話

「霖ってさ、好きな奴いんの?」 「え、何?僕に興味ある感じ?」 「そうじゃないけど、何かいそうだなぁと思って」 「……いるよ。超好きな奴」 「へー!付き合ってんだ?」 「は?付き合ってたら笹原とシテない」 「……え、片思いってやつ意外?霖が!?告らないの?」 「……うるせ……お前はどうなんだよ」 駅に向かいながら恋ばなみたいな話をする男子高校生二人。 どうやら笹原にも片思いしている奴がいるようだけど、途中で誤魔化されて詳しく聞くことは出来なかった。 片思いね…… 片思いなんてそんな可愛いものとっくの昔……遠い過去だわ。 僕には好きな奴がいる。 そう……物心ついた時からずっと…… 電車に揺られながら、そいつのことを思い返していた。 …… 何回告っても何回アプローチかけても駄目なんだよなぁ。 自分で言うのもなんだけど、僕ってカッコいいし成績もいい。運動だってそこそこできるんだけど。 ぶっちゃけスゲーモテるんだけど! そいつは全力で僕のことを大好きだって言ってくれる。 くれるんだけど! その「大好き」が欲しいわけではない。 もっと熱っぽい視線で色っぽく愛してるとか言って欲しいんだ。 ……しかし…… 全く!対象外なのが寂しい。 くそ…… 相手にされないこの悲しさ。 イライラするけど、そいつから連絡があるだけで嬉しくなってしまう自分がいて我ながら呆れてしまう。 だから今も内心浮かれている。 駅での待ち合わせはだたのその場しのぎの嘘ではなく、本当にそいつと約束しているからだ。 今日は自宅には帰らず、駅近くにあるそいつのマンションに泊まる予定になっていた。 「霖、んじゃなー」 「ん」 ひとつ手前の駅で笹原が降り、ヒラヒラと手を振って別れた。 車内出入口のすぐ脇に寄りかかってスマホを弄る。 そいつにもうすぐ着くとメッセージを送ると、すぐに可愛らしい柴犬のOKスタンプが返信されてきた。 ……か、可愛い……クソ…… もう駅で僕のこと待ってんのかなぁ…… それだけで超嬉しくなってしまう僕は、本当にそいつのことが大好きなんだと改めて思うのだ。

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