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第6話
「霖ここー!お疲れー!」
「詩ぁ!」
改札を出てすぐ目の前、柱の脇に立っている人物が僕に向かって笑顔で手を振っていた。
スラリとした細身の体格で、シンプルなワイシャツに紺色のスラックス姿のそいつは、アラサーにもかかわらず手をヒラヒラと振っている。
それが可愛いくて駆け寄った勢いで抱きついてしまった。
三十過ぎのおっさんに可愛いなんて、恐らく詩意外には使えないと思うくらい人懐っこい笑顔で僕のことを迎えてくれるから、こっちは嬉しくて仕方がない。
こいつは萩生詩 、現在33歳。
スキンケア用品や化粧品を主に取り扱う会社に勤める会社員で、僕のお兄ちゃん的存在。
女性社員が多いの会社だから、皆に頼りにされちゃってイヤー困るなぁあははあははって言ってたけど、自己申告なので本当かどうかはわからない。
それでも性格は明るくて爽やかだし、女性の多い職場ならモテるだろうなっていうのはわかる。
童顔で肌が綺麗なので正直もっと若く見えるし、髪はサラリとしていて清潔感がある。
クリっとした瞳は愛嬌があって可愛らしいのだ。
「おーし!夕飯の買い物に行くぞー!霖、何食べたい?」
「んーそうだなぁ。やっぱり詩の作ったメンチカツが食べたいかな」
「おーし!おっけー!スーパーへGOだ」
詩と並んで歩きはじめると、詩の匂いがふわりと香ってくる。
普段は香水などはつけないから、殆どデオドラントとか柔軟剤が微かに香る程度だ。
汗の匂いも混じっているその匂いについ興奮してきてしまう自分がいた。
いい匂い過ぎぃ……
詩が住んでいた家がうちの家の隣にあって、家族ぐるみの付き合いもあり、僕が生まれた時から僕のお世話をよくしてくれて、ほとんど兄と言ってよい存在だった。
物心ついた時から詩と一緒にいたし遊んでもらって育った僕はその頃から優しい詩のことが大好きで、同い年の女の子なんか眼中になかった。なので当然のように、保育園に通っている時にプロポーズしたのを覚えている。
絶対に詩と結婚するって心に決めていた、宮ノ内霖、当時5歳がそこにいた。
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