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第7話

「あ、あいつ今詩のこと見てた」 「んあー?霖を見てたんだろ、あ、このブドウ美味しそう。クイーンニーナだってー。霖食べる?」 「食べるー」 「じゃ、デザート用に買おう」 スーパーのカゴを片手に下げ、詩は手際よく必要な食材をカゴへと入れていく。 あー!スーパーのカゴがこんなによく似合うサラリーマンなんて、この世に詩しかいないわー。 どさくさに紛れて詩にちょっかいだす変な輩がいないかピッタリとくっつき警戒しつつレジに並んだ。 「あのね霖くん?その周りを警戒する癖やめなさい」 「え、そんなこと言っても無理。前に詩に抱きついて来たキモい奴がいたじゃん!ああいう奴がまた現れるかもしれないだろ?」 「あれは抱きついてきたんじゃなくて、肩をポンポンされただけだろー。相手は酔っぱらいみたいだったし。むしろ俺よりも霖の方が危ないよ」 「肩ポンポンとか……は、無理だろー!そいつのその腐った手をへし折ってやりたい。僕は大丈夫なの」 「うへー霖怖いからー。折角の可愛い顔が台無しだよ」 そう言いながら前髪を掻き分け、おでこを撫でてくれるから……嬉しくて仕方がない。 こういうことしてくれるから大好きっ! あー!さっさと会計を済ませて家に帰りたい! それで詩と一緒に夕食の準備をしたい! 会計を済ませ、詩がいつも持参している買い物袋に食材を詰めスーパーを後にした。 詩のマンションは駅から歩いて数分の場所にあり、そこの5階に住んでいる。 2LDKの間取りで、僕が泊まっても十分な広さだ。 もう何回も何十回も泊まっているから何処に何があるかは把握済みだし。 家に上がるとまた落ち着く良い匂いに気持ちが緩んでしまう。 明日は学校休みだし、今はあいつがいないから今夜は思い切り詩に甘えられる!

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