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第9話
……そう。
僕には19歳年の離れた兄がいる。
母さんが最初に結婚した人との間に儲けた子だ。
認めたくないけど、現在はこのマンションで兄さんと詩は一緒に暮らしている。
……む、ムカつくけど!
事実だから仕方がない!
「だって兄さん今スペインだろ。兄さんいるときは絶対詩と一緒に寝かせてくれないんだからさー」
「それはそうだけどー」
「僕……詩のこと恋しくてマジ寂しいんだよね、イイでしょ?」
必殺上目遣いおねだり攻撃!
詩がこれに弱いことは知っているから、使えることは全部使う!
甘えっ子に育ったのは紛れもなく詩の気を引くためだと思うし、父さんからは「霖のそういうあざといとこ僕似だよねー!」って言われたことがある。
詩の顔が戸惑いつつも、ニヨニヨと緩んでいくのがわかった。
「イヤー!霖のそれマジ可愛いっ!悩殺来たー!もう仕方ないなぁ!今夜は特別だぞー!あははあはは」
「やったー!」
照れながら僕のことをウリウリ抱きしめてくれる、そんな詩の方が僕なんかよりも何倍も可愛いって思う!特別とか言いながら、いつも一緒に寝てくれるんだ!
あああ……イイ匂いだし、あったかいから本当幸せ!この世に僕と詩二人だけならいいのに!そう思ってしまう。
「来週、霧緒が帰ってくるからその時またおいでよ」
「えー兄さんうるさいからイヤー」
「お土産きっとあるよ」
「どうせ僕がいても二人でイチャイチャしだすんだからさー!あれ本当ムカつくんだよねー」
「ぶーー!!!」
「……口から吹き出すなよ。本当のことでしょ」
「そ、そ、そうでしたっけね!?あ、霖さん?何か飲む?飲む?」
「……いらなーい。思春期真っ只中の高校生がいるのにさーあれは酷い!兄さんマジムカつく。あれ絶対わざとだし!」
「そそそんなことないと思うけどなー!ほらほら霖も手伝って!お腹空いてきたー」
顔赤くしちゃってなんだよ詩のバカ!
バカって思うのに、やっぱり好きで好きでたまらない僕の大好きな人。
そんな詩は実は僕の兄さん、宮ノ内 霧緒 の恋人だったりするのだ。
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