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第10話

そんな兄さんは今仕事でスペインへ行っている。 兄さん不在の時は詩を独占できるから、はっきり言ってもう帰って来なくてもイイゼって思ったり。 こんな時こそ、兄さんから詩を奪うチャンス! 「霖、スープ作る?」 「うん、いいよ」 「家でも何か作ってる?汐里さんも教えてくれるでしょ」 「あーまぁねー。だけど、父さんより詩の方が料理教えるの上手いし、僕は詩に教えてもらいたいな。僕和食好きだしー。父さんは最近パンばかり焼いてて正直レベル高くてついていけない」 「あはは、今汐里さんパン作りに凝ってるみたいだね。この間お裾分けしてもらったパン凄く美味しかったよー!」 キッチンで詩と二人並んで料理している時間がが楽しくて仕方がない。 料理好きの詩と小さい頃から一緒にいる僕だから、自然と料理は覚えるしするようになった。 エプロン姿の詩からはやっぱりいい匂いがしてくる…… エプロン……マジ似合うー! ……兄さんはいつも詩のこの可愛い姿を眺めているかと思うと、ぶっちゃけ羨ましくてたまらない! だからエプロン姿の詩の肩にコツンと寄りかかり頬を擦り付け、すりすりしながら色っぽく詩に流し目を送った。 「ンー詩の匂いも詩も好きー」 「はいはい。あ、スープにワカメ入れるだろ?」 「……入れる」 積極的に詩にスキンシップしてるのに、効果はいまいち。つか、全然効いてない! ちょっと待って?今自分の最高の技をもって落としにかかっているのに詩は、いつもの変わらない詩だ。 もう本当自信なくす! って…… そんなこと……いつものことだからいいんだけど。 僕が和風スープを作り、詩がメンチカツを慣れた手つきで揚げる。 メンチが揚がる香ばしい香りが鼻腔をかすめると、急にお腹が空いてきてしまった。 「昨日煮たひじきあるけど食べる?」 「食べる!いただきまーす!」 「いただきます」 ダイニングテーブルに二人向かい合いながら夕食を食べ始める。 まだ熱いメンチカツはなかなか食べるのが困難だけど、ジューシーでマジで旨い! 「霖、猫舌なんだから気をつけなよ」 「ん!あふいっ!」 「ほら、だからもう少し冷ましてから食べて」 「詩ー!舌火傷したーねぇ舐めて?」

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