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第15話

パチリと部屋の明かりが消され、一部の間接照明だけが灯される。 枕を引き寄せごろりと身体を横たわせ、隣の詩の方に向き直った。 詩の細い首から鎖骨のあたりが良く見えてドキドキしてくるし、今のこの状態がこの上なく幸せだと実感する。 詩は綺麗だ…… 童顔だしほんわかした雰囲気が先行し可愛いらしい印象だけど、とっても綺麗だと思う。 サラリとした髪は柔らかいし、パッチリした瞳は人を惹きつける。 それに黄色みがかった健康的な肌はキメが細かく綺麗だ。 「……ねぇ……詩ぎゅぅしてよ」 「……」 「ねぇねぇ」 「ぐーーー」 「目開けたまま鼾かくなよ」 「あーはいはい。いい?ぎゅぅだけだぞ」 「……わかってる」 もそもそと詩に近づき詩の胸の中に顔を埋めた。 優しくぎゅっと抱きしめられる。 …… はあああああぁ…… このぬくもりに身体が溶けてしまいそうだ。 三十代のおっさんのくせに体臭は薄くて甘い。 当然大好きな匂いなので、犬のようにクンクンと鼻をならし嗅ぎまくってしまう。 最高に落ち着くし、精神安定剤のように心が安らいでいく。 大好きな人と一つ屋根の下で、しかも同じベッドの上で抱き合って寝ている…… ……この先もできればしたい…… したいけど、実はこれが僕の踏み込んでいい限界だった。 これ以上のことを詩に求めることはできないのだ。 過去に幾度となく挑戦してきたけれど、すべて失敗に終わっている。 誘ってみたり襲ってみたりと、兄さんからの略奪愛も考えたりした。 はじめは冗談交じりに相手をしていた詩も、僕が本気だと知った時は必死だったし、真剣に話を聞いてくれ兄さんとの関係も包み隠さず話してくれた。 兄さんとは学生からの付き合いだということや、同性だけど愛し合っていること、今現在もお互いに愛し合っているということ……そんなことをあわあわ赤くなりながら説明している詩を見ているだけで腹が立ったし、どうして僕が詩の先輩として、先に生まれて来なかったのか憤り兄さんのことを恨んだ。 まぁ……今でも普通に思ってるけど! 詩に愛されている兄さんがムカつくし嫌いだ! 一度感情に任せて寝ている詩をガチで襲ってみたことがある。 僕は自分に自信があったし、優しい詩のことだから誘惑できると完全に思っていた…… 雰囲気に流されてとか、同情でもいいから迫れば抱いてくれるだろう…… そう思ってたんだけど。 甘かった……

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