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第19話
「あれ、先輩どうしたんですか?」
「宮ノ内ちょっといいかな?」
「勿論いいですよ。じゃぁ笹原あとでね」
「はぁい」
声をかけてきたのは、少し前に告られた仲村先輩という三年だった。
当然その時に断ったんだけど、友達みたいに声をかけてもいいかな?と言われOKした。
上級生にそんなこと言われたら断ることなんてできない。
「中庭にでも行こうか」
「はい」
仲村先輩は僕よりも身長がありスラリとしていて、親切で優しい。
顔面偏差値も良いらしく(僕から見たらまぁまぁだけど)追っかけもいるという噂だ。
エスコートするように僕の事をリードするところが大げさで少し笑えるけど、その振る舞いから育ちの良さを感じさせた。
中庭に向かうと、生憎ベンチはどれもうまっていて座れそうになかった。
開いているところがないか見渡していると、座っていた生徒の一人が手を挙げて合図してくる。
「どうぞこちらです」
「あはは、有難う」
「……」
うっわ……一年に場所取りさせてたのかよ。
その一年は僕の顔を見ると、ポッと顔を赤く染めてその場所から離れる。
先輩は僕の肩を軽く抱き優しくベンチに座らせてくれた。
まるで僕を壊れ物のように扱うこの先輩はちょっとおかしいんじゃないかと思う。
「宮ノ内は今日も綺麗だね。……本当綺麗だなぁ」
「そんなことないですよ」
「ずっと見ていても飽きないくらい綺麗だよ本当。こうして宮ノ内と話せるようになれて僕は嬉しいんだ」
「そうですか」
……うっとりとした表情で僕の顔をじっと見つめてくる仲村先輩はふざけているわけではなく真剣なんだと思うのだけど、どう返事をしたらいいのか迷う正直面倒くさいタイプだ。
こういうタイプは僕のイメージが既に出来上がっていて、大抵それは美化されている。
そのイメージを崩してしまうと一気に冷めるか、逆上して狂暴になるかどちらかな気がする。
冷めてくれればいいけど、逆は怖い……だから面倒くさい。
「宮ノ内は肌も綺麗だし、男の子じゃないみたいだ」
「えっと、仲村先輩だって綺麗です。あの……そんなに見つめないでくれますか?恥ずかしいです」
「あ、ごめん!つい」
「それに僕ちゃんと男の子です。先輩ったら……酷いなぁ」
そういいながら相手が赤面するくらいの可愛い表情を作り、ちらりと恥ずかしそうに見つめてみた。
今の僕の表情、
かなり可愛いはず……
確信犯だからね。
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