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第20話

僕を見つめたまま時が止まったように仲村先輩の動きが止まり、次の瞬間強く抱きしめられていた。 むげっ!思い切りきたっ!! ……く、苦しい。 「ああぁ!!宮ノ内はなんて、なんて可愛いんだっ!やっぱり諦めきれないっ!」 「な、仲村先輩……離して……苦しい」 周囲にいた生徒達もざわつきはじめ、ヒューヒューと煽りだす。 勘違いや噂は慣れているからいいけど、こんな風に抱きつかれるのは好きではない。 この先輩の体臭は好みじゃないし、生理的に受け付けない気がする。 その証拠にさっきから鳥肌が止まらないのだ。 僕の腰を無駄に触るなっての! 「ごめん……!ついっ!宮ノ内大丈夫かい?」 「けほ……は、はい大丈夫です。ごめんなさい。先輩の期待に答えてあげたいんですがやっぱり僕……」 「そんなに、そんなにそいつのことが好きなのか……」 「はい」 「そこまで君が思っている奴は一体どんな奴なんだ……」 「……」 「……宮ノ内……君は好きな人がいるってこの間言っていたよね。その人のことをずっと思い続けているって」 「……はい」 「一体どんな奴なの?当然僕よりも魅力的なんだよね?そうじゃないと僕は納得できないな」 「え、えと……て……」 てめえなんかよりも、何倍も何百倍も魅力的で!超可愛くて愛しくて!めちゃくちゃキュンキュンする奴だよバーーーカ! ってつい言いそうになったけど、咄嗟に飲み込んだ。 お前なんか比較の対象にもならないわ。

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