20 / 77
第20話
僕を見つめたまま時が止まったように仲村先輩の動きが止まり、次の瞬間強く抱きしめられていた。
むげっ!思い切りきたっ!!
……く、苦しい。
「ああぁ!!宮ノ内はなんて、なんて可愛いんだっ!やっぱり諦めきれないっ!」
「な、仲村先輩……離して……苦しい」
周囲にいた生徒達もざわつきはじめ、ヒューヒューと煽りだす。
勘違いや噂は慣れているからいいけど、こんな風に抱きつかれるのは好きではない。
この先輩の体臭は好みじゃないし、生理的に受け付けない気がする。
その証拠にさっきから鳥肌が止まらないのだ。
僕の腰を無駄に触るなっての!
「ごめん……!ついっ!宮ノ内大丈夫かい?」
「けほ……は、はい大丈夫です。ごめんなさい。先輩の期待に答えてあげたいんですがやっぱり僕……」
「そんなに、そんなにそいつのことが好きなのか……」
「はい」
「そこまで君が思っている奴は一体どんな奴なんだ……」
「……」
「……宮ノ内……君は好きな人がいるってこの間言っていたよね。その人のことをずっと思い続けているって」
「……はい」
「一体どんな奴なの?当然僕よりも魅力的なんだよね?そうじゃないと僕は納得できないな」
「え、えと……て……」
てめえなんかよりも、何倍も何百倍も魅力的で!超可愛くて愛しくて!めちゃくちゃキュンキュンする奴だよバーーーカ!
ってつい言いそうになったけど、咄嗟に飲み込んだ。
お前なんか比較の対象にもならないわ。
ともだちにシェアしよう!