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第26話

そうだこの人、僕マニアだった。 こんなに俊敏に行動できるなんて予想外だ。 そう今さら思って後悔してももう遅いこと。 「仲村先輩!ちょっと……痛いです!」 「まだ、まだその人がいるかもしれないだろ!ほら急いで」 「だってもう帰りましたって!」 「今日の会議が終わったのは今さっきのはず」 「え」 「学校に仕事できたならきっとその役員会議に出席してるはず!だからまだきっといるよ」 な、なんだって? そんな会議とか知らないしっ! この人なんでこんなに詳しいの!? 「うちの親PTA会長なんだ。今日の会議にも出席してるし。でも安心して?秘密は絶対守るから。あ、念のため聞くけど君の好きな人ってうちのパパじゃないよね?」 当たり前だ! 走りながらパチンとウィンクされたんだけど! ちょっと待って!こんなはずじゃない! 鞄片手に引っ張られ、学校の裏の駐車場に向かう。 先生や関係者の車がいくつも並んでいるのが見えた。 「先輩!もういい加減にして下さいよ!」 そう言いながらやっとの思いで腕を払いのける。 掴まれていた手首がマジで痛い。 「こんな、こんな無理矢理とか……僕嫌です!」 「……あ、宮ノ内っ!ごめん……」 手首マジ痛いし、こんなことで即席の嘘がバレるのがスゲーダサくて嫌だった。 仲村先輩にはバレたくない。 痛めた手首を反対の手で庇うようにおさえ、瞳をうるうるさせて悲しげな表情を作る。 「み、宮ノ内……」 「先輩だから、勇気を出して教えたのに……それなのにこんなの……酷いです」 「あ、ごめん!つい、僕ったら夢中になってしまって!宮ノ内のその……好きな人がどんな奴だって思って、しかも今ここにいるなんて聞いたら居ても立ってもいられず……本当ごめんよ」 本当に反省しているみたいだけど、まるで待機してたような速さにびっくりで仲村先輩に対する警戒レベルが上がった。 この先輩……超面倒くさいから関わりたくない。 「もう、先輩なんて知らない!」 !!! うるうる泣きながらその場から走り去ろうとUターンした矢先、思い切り誰かにぶつかってしまった。

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