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第29話

「大先輩じゃないですか。え、僕もしかして怒られちゃったりします?」 「……何か怒られることでもした?」 「……生徒会室でしてたの……知ってますよね」 「……あぁ、あれか。無理やりだとかっていう状況なら直ぐ対応したけどな。仲良さそうだったし。俺もあそこに無断でいたからなぁ」 「もしかして、当時生徒会長だったとか?」 「はは、あたり。懐かしくてついな」 「ふーーん、頭良さそうだし会長っぽい。あ、仲村先輩に困ってたのは本当です。告られて友達になったのはいいけど、凄く僕に執着してきて……」 「へぇ……告られたって男同士だよね?君、男の子にモテるんだね」 「ん、まぁ……男の子にも女の子からもモテます。女子がウザくてこの高校は入ったのに、男子からもアプローチあってうんざり」 「はは、その溜息は本当に困ってるんだな。贅沢な悩みだな。モテて嫌だなんていう奴はなかなかいないよ。あぁ、このまま病院くからね」 「え」 「足、結構痛むだろ?捻挫だろうけど、ちゃんと診てもらった方がいい。俺もちゃんと前を見ていなくて不注意だった。ぶつかって悪かったな」 片手でぽんぽんと頭を撫でられた。 どうやらこのケガに責任を感じてくれているようだ。 このおじさんいい人そうだし、懐大きそう…… 「僕も前見てなかったから迷惑かけてごめんなさい。迷惑ついでにもう一個。さっきいた仲村先輩に、野宮さんが僕の好きな人だって言っちゃいました」 てへ! 「!!!!……っ!はぁぁ!?」 車体がガクンと揺れたのは、野宮さんが急ブレーキをかけてしまったからだ。 思いのほか揺れて僕もびっくりしてしまった。 「ちょ!それどういうこと!」 「えっと、先輩が僕の好きな人教えろってしつこくて~。ああいう人に自分の本命って教えたくないじゃないですか~?だから野宮さんに会った時にこのおじさんなら適任だ!ってビビビって思って、先輩に今学校に僕の好きな人が仕事で来てるんですよ~!ってメールで知らせたらさっきの状況になってしまって……」 「……だから俺に対して喋り方が馴れ馴れしかったのか」 「へへ、野宮さんがいい感じに反応してくれたから本当助かったです!」

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