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第30話

ぶつかって起き上がらせてくれた野宮さんとのやりとりで、少しでも先輩に僕たちが親密だということをアピールしなくてはいけなかった。 野宮さんがどう理解してくれたかはわからないけど、余計なことを言わずに対応してくれたので、あの時は僕が野宮さんに甘えてるように見せることができたと思う。 「なんで俺なんだよ」 「えーだって野宮さんクオリティー高いじゃないですか!大人だしカッコいいし!仲村先輩が納得してくるような人ってなかなかいないんで野宮さん見たときマジ神降臨って思いました!」 「そりゃどうも。こんなおじさんを好きな人だって……先輩は納得してくれるのかな。……ん?って、じゃぁ生徒会室にいたあの子はなんなんだ?君たちつきあってるんじゃないのか?」 「ん?あぁ、あいつはただの友達です。たまにエロいことしちゃう友達。仲いいけど恋人じゃないです」 「……恋人じゃないって……君って……ああいうこと普通にできちゃう子なの?」 「普通にはしないけど~気持ちイイことは好きだよ」 「……なら気持ち良くしてやるって俺が誘ったらそれにのってくれるの?ヤらせてくれるわけ?」 「は?んなわけっ!」 「なら、そういうことを初対面の人には喋らないことだ。軽い子だって思われるのは心外だろ?」 野宮さん声のトーンが少し落ち、口調が厳しくなった。 「……ご、ごめんなさい」 「そういうことは言わないように気をつけなさい」 「はーい」 ちょっと怒らせてしまったみたいだ。 だって本当のことだからいいじゃんと思いつつも、注意されたことに不快感はなかった。 それからはお互い暫く無言でいたし、僕もボーッと窓の向こうの流れる景色を眺めていた。 そしてそこから病院に着くまでの記憶がぷっつりない。

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