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第33話
「いただきまーす!」
詩と父さんと僕の三人で晩御飯を食べた。
こういう光景は宮ノ内家では珍しくない。
母さんは大抵夜遅く酔っぱらって帰ってくるし、兄さんはここを出てからはあまり家には来なくなった。
……兄さんは別に来なくていいけど。
兄さんがいなければその間は僕が詩を独占できる。
「霖、飲み物何がいい?」
「ん、水でいいよ」
「オッケー」
いそいそとキッチンに飲み物をとりに行ってくれたり、僕が動けない代わりに詩が動いてくれるからとても助かる。
捻挫して良かったかも……そんなことを思ってみたり。
もっといっぱい甘えたい。
添い寝して欲しいし抱き締めて欲しい。
そうしたら捻挫の痛みなんて吹き飛んでしまうに違いない。
だけど添い寝なんて詩の家に泊まりに行った時だけだし、明日も当然仕事なので夕飯を済ませると詩はすぐに帰ってしまった。
「あー詩帰っちゃった!詩と一緒に住みたーい!」
「……こら、息子。そんなこと言うとお兄ちゃんに怒られるぞ」
「だって本当だもん!兄さんいないし!言うだけなんだからいいでしょー!」
「本当詩びいきだな霖は。まぁ、詩くん可愛いから気持ちはわかるけどね~」
ニヤニヤと笑いながらキッチンで洗い物をする父さんも詩フリークだ。
ちなみに母さんも詩のことは大好きなので我が宮ノ内家の人間は全員愛love詩でいる。
……まぁ、その筆頭が兄さんなのは間違いない。
良いなぁ……詩の愛を独占できて。
なんて羨ましい……イヤ憎いー!
兄さんの馬鹿ー!
……
あっとそうだ、野宮さんにメッセージしておこう。
自分のことでいっぱいいっぱいで野宮さんの身体のことを考えていなかった。
大きな身体をしてるから大丈夫だと思うけど、念のため確認しておかないと。
結構な勢いでぶつかったしなぁ……
送迎してもらうのにメッセージを交換しておいたので、僕は鼻歌を歌いながらスマホを開いた。
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