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第34話
野宮
『ねー野宮さーん!は、怪我しなかった?』
……
馴れ馴れしい……
敬語使え敬語を。
そう思いながらもその一文に不快感を感じない。
あの顔が浮かんでくるとフッと思わず笑みが溢れる。
やれやれ、変な子に出会ってしまった。
今日の出来事は奇妙で可笑しい。
一瞬自分が学生に戻ったような、懐かしさを感じた出来事だ。
宮ノ内 霖。
……
一言で言うなら美少年。
一瞬で目を奪われる程に垢抜けているあの整った顔に内心驚いた。
あれで男子校は不味いだろ。
仕事で早めに学校に到着してしまい、気紛れで懐かしの生徒会室へ赴いた。
そこで学生だったの頃の思い出に浸りながらベランダでこっそり一服していた時だ。
……男子生徒が抱き合いながらじゃれるようにキスをしていた……
普通の男なら動揺するだろうだろうが、何せ過去に色々とありそれ系には免疫があるもので、その行為自体にはあまり驚かず。
たまにいるんだよなぁ、ズバ抜けた容姿の子が……と、宮ノ内の美しさの方に惹かれてしまったのだ。
ネクタイを緩めながらスマホ画面を眺め、俺はため息をついた。
『ご心配ありがとう怪我はないよ。宮ノ内の方こそ大丈夫か?』
『そうだよね。おじさんの身体固かったしね!僕は足痛いよ!今日は腫れてるからお風呂はいれない。嫌だー!』
固いって俺の身体は壁かよ……
ぶつかった時に衝撃はあったが、怪我をするまでではない。ってことはやはり壁か……
宮ノ内の足首は腫れて確かに痛そうだった。
あれで歩いての通学は辛いだろう。
クリニックから借りてきた松葉杖は使う気ゼロだったので、明日の登校は果たしてどうするか……
そこまで考えてやる必要も義理もない。
けれど……
はぁ……
つい明後日は送ってやると約束をしてしまった。
なにやってるんだよ俺は……
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