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第36話
「おはよう」
「おはようございまーす」
翌日、野宮さんは約束通り家の前まで車で迎えに来てくれた。
あ、この間とは違うスーツだし違う靴を履いている。
そのせいか少しだけ野宮さんが若く見えるのが不思議だった。
スルリと助手席に座りシートベルトをつける。
「よろしくお願いしまーす」
「どう?少しは回復したか」
「うん、ちゃんとは歩けないけど、大分楽になったかな。あ、父母がお世話になります~っだって」
「そうか。無理はするなよ。送迎は今日だけの大サービスだからな」
「いえーい!やったね!って……え、送迎って帰りもしてくれるの?」
「時間調整ができたから大サービスで」
「うっそ!スゲー!!野宮さんマジ神過ぎーー!!」
「神はやめろ」
「好きになっちゃうかも~」
「バーカ。そういう冗談はやめなさい」
そう言いながらポンと頭を軽く叩かれたけど、こういうことするのって可愛いなって感じてしまう。
「だってそんなに優しいんだもの。下心あったりしないんですかー?」
「あのな……高校生相手に下心とかあるか」
「……そうですよねーガキなんておじさんは相手にしないですよねー」
こんなに年離れてたら相手になんてしないよね。
言われなくても……知ってるそれ。
「でも僕はアラサーは範囲なんで野宮さんも大丈夫だよ」
「……はいはいそうですか。って宮ノ内お前好きな子いるんだろ?」
「え」
「本命は教えたくないって言ってたじゃないか」
「あーーーー。うん、いますよ」
いますよ好きな……
大好きな人。
「そいつとつき合ってるんじゃないのか?」
「あはは、つき合えたらいいんですけどね~。絶対無理なんで。僕が一方的に好きなだけだし。あ、向こうも凄く好きだって言ってくれるしスゲー仲いいんだけど」
「……」
「恋愛対象じゃないんですよね~僕。ほーーーーんとつき合うとか、可能性ないから」
手の届くところにいるのに手に入れることができないって結構残酷だ。
ってそう思った自分が可哀想に思えてくる。
って言うか可哀想すぎて切なすぎて逆に笑えてくるんだけど。
少しだけ爽やかな朝の青空がくすんで見えてしまう。
「そうか。意外と一途なんだな」
「……意外って失礼じゃないですか」
「すまん。もっと軽い子だと思ってた」
「あー!酷い!野宮さんがそんな風に僕のこと思ってたなんて傷つくー!」
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