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第43話
野宮
「ほら詩、この人が話した野宮のおじさん」
「こんにちは。俺、萩生って言います。霖とは家族ぐるみの付き合いをしてるんですが、霖が色々お世話になったみたいで、ご迷惑をお掛けしました」
青年の瞳はくりっとして愛嬌があり、爽やかな笑顔が若々しい。
肌が綺麗で健康的だし、やっぱり大学生なのかも?と思ってしまう。
「いえ、こちらこそ俺の不注意で、宮ノ内くんにケガをさせてしまい申し訳ないです」
「野宮さん、送ってくれて有難うございました。僕ここで大丈夫でーす」
「……わかった。じゃぁ、お大事にな」
「はーい」
「有難うございました」
青年の腕に手を回し、ぺこりと会釈する宮ノ内とその隣にいる彼との距離はとても近い。
えーと、くっつきすぎでは?
……この二人つき合っているのか?そう思ってしまうくらいだ。
俺なんか必要ないくらい完全に二人の世界だし、仲が良すぎて少し妬けてしまう。
今さっきまで拗ねていたのが嘘みたいに宮ノ内はご機嫌だ。
……
あぁそうか、
俺は高校生の彼に揶揄われたのかもしれない。
どこかへ一緒に行きたいとか、期待させるようなことを言って、それに俺がのるか様子を伺い面白がっていたのかも。
きっとあの様子なら、すぐに俺のことなんて忘れてしまうんだろう。
……
って、期待ってなんだよ。俺は何かを期待していたのか?
はーーーーやれやれ。
二人と別れ赤信号で停車しながら、長いため息をついた。
俺は昔から可愛い子に弱いからなぁ。
しかもあんな美人な子は滅多にいない。
近くにいたらひたすら愛でて可愛がり、世話をしたくなってしまう。
あんな子と一時でも関われたことに感謝しておこう。
十分目の保養になった。
「はは」
若干の虚しさを感じつつも、無理やり頭を仕事モードに切り替える。
やることは山ほどあるのだ。
……
もうあの子とはこの先会うこともないだろう。
もしかしたら学校で見かけるくらいはあるかも知れない。
見かける度に美しい大人に成長して行くんだろうな。
おじさんはそれを楽しみにしていよう。
俺は俺。
彼は彼だ。
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