44 / 77

第44話

そーんな出来事があってから1ヶ月ほどが経った。 僕が怪我した足はすっかり治り、普段と変わらないいつも通りの生活を送っている。 もうあの人に連絡してないし、連絡がくることもない。 明日は学校は休み……当然のように詩の家にお邪魔してゴロゴロしてる僕。 夕食を済ませてソファーでまったり中だ。 今日のカレーもとっても美味しかったぁ。詩が作るご飯は何でも美味しい。 これでまた今夜も一緒に同じベッドで寝られたら幸せなんだけど! ……ってさ、そういつも上手くいくものでもない。 今夜はダメなんだ。 家に帰らないと。 「霖、そろそろ帰れ。もうこんな時間だ」 「……」 「詩、霖を送ってくる」 「ふぁーい」 「……」 リビングに寝そべっている身体をお越しながら僕は、声をかけてきたその人物を無言で見つめた。 スラリとした長い足……背が高くコートを羽織る姿は様になっていてムカつく。 モデルでも十分食っていけるだろう、そんな容姿のおっさんは僕の兄貴だ。 宮ノ内霧緒…… はっきり言って、はっきり言ってカッコいい…… 僕でも認めざるをえない美形おじさん……それがムカつく腹が立つ!! 「はいはい、帰りますよー」 そう言いながら起き上がり鞄にスマホを入れようとした。 ~♪ …… 届いたメッセージを何気なく確認する。 …… …… 「霖ー?忘れ物ない?」 「……」 「おーい!聞いてる?霖くーん?」 「え?あぁ……大丈夫!じゃ、詩またね!お休み~」 「はいはい、お休み~」 ぎゅっと詩と抱きしめ合って詩の家を後にした。 その間、兄さんがその様子を静観しているのはいつものこと。 兄さんはこんなことじゃ怒らないのだ。 僕が詩にくっついても抱きしめても何も言ってこない。 それがまた余裕な感じがしてムカつく。 だけど兄さんが詩のことを好きだって言うはわかる。好きというかメチャクチャ好きなんだ。 だって職場の飲み会に迎えに行く時点で過保護だろ? 詩はお酒に弱いらしく過去に色々やらかしているのだろうか、兄さんは可能な限り迎えに行くのだ。 自分がどうしても行けない時は僕が行っている。 ……未成年を保護者代わりに使うのやめて欲しいとか思うんだけど、詩のことだから喜んでホイホイと迎えに行っちゃう自分がいた。

ともだちにシェアしよう!