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第45話
兄さんが家にいるときは泊まれない。
それはわかっていることだけど、やっぱり帰るときはいつも寂しくなる。
夜の風は冷たくて身体が震えた。
前を歩く兄さんの背中を眺めつつ、駐車場に移動し、車に乗り込んだ。
「さっむ……」
「暖房が効いてくる頃には家に着くな」
「……兄さんがさ、車の免許取ったのっていつ?」
「ん?……大学入ったその年の夏休みだけど」
「ふーん……」
「……」
運転免許かぁ……僕も取ったほうがいいんだろうなぁ。
チラ見をする兄の横顔は僕とよく似ている。
母さんをベースにした僕たち兄弟は良く似ているんだけど、どちらかと言えば僕の方がより母さんに似ている。
兄さんは最近眼鏡をかけていることが増えた。
ぱっと見た感じの印象は違うけど、やっぱり兄弟だってわかるよなぁ……
眼鏡をかけた兄さんは、それはまたカッコ良くてたまらないらしく、その兄さんにキュンキュンと萌える詩がいて僕はムカツクのだ。
いい年こいてキュンキュンしてんじゃねー!
僕だって!僕だってカッコいいんだからな!!
それから兄弟で特に会話をするわけでもなく、車はすぐに宮ノ内家に着いた。
「……はぁ。疲れた~」
自分の部屋のベッドに身体をあずけ、深いため息をつく。
ホッとしつつも虚しさが心を占めている。
暫くしてスマホをとりだし、先ほど届いたメッセージを改めて確認した。
……
今頃……何?
そう思いつつも、なんて返信しようと思案している自分。
嫌なら不快なら無視すればいいのに、それは不思議と選択肢になかった。
相手は兄さんと同じくらいなのに、何故かおじさんとは対等でいたい自分。
年齢なんて関係ないと言いつつも、我儘を言う権利は僕にあると思っている。
向こうにとってそれは迷惑なのかもしれない……だけど僕にとっては自然で当たり前のことなんだ。
『ケガは良くなったか?』
野宮さんから久しぶりに届いた、一言だけのメッセージ。
……って、
あれからひと月以上経つって言うのに、何このメッセージ。
治ったに決まってるじゃん。
若者の回復力なめんなよ?
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