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第50話

「儚げ……ね」 「何か文句でも?学校じゃ、ちゃんと真面目にいい子してるんだからね」 「あはは、そうか!色々大変なんだな。ん、インターに寄ろうか」 高速の途中でインターに寄り暫しの休憩。 トイレに行ったり飲み物を購入したり、お土産コーナーを見たり……それだけなのに何故か楽しく、その頃には僕の機嫌も大分良くなっていた。 「んー!外は空気が冷たい」 だけど気持ちがいいなぁ。 コートの両ポケットに手を突っ込みながら全身で伸びをする。 空気が澄んでいて、空は青く高い。 「はーい!君キレーだね!女の子かと思ったら男の子なんだ。今男子トイレ入ってたよね?」 「……」 「可愛いね。君はどこまで行くんだい?良かったら俺と一緒に写真撮らない?旅の記念にさ!」 「えっと、ごめんなさい。遠慮します」 団体で来ているアジア系の青年に片言の日本語で声をかけられたけど、丁重にお断りをした。 知らない奴と写真なんてごめんだ。 直ぐに諦めてくれたけど、チラチラと送られてくる視線はあまり気持ちいいものではなかった。 さりげなくパーカーのフードを被り、視線を遮断する。 「お待たせ」 飲み物を買ってきてくれた野宮さんの姿にホッとし、やんわりとその胸に抱きついた。 「……遅い」 「え?ん?どうした……」 「ナンパされてた」 「は?こんな短時間に……マジか。うちの宮ノ内はモテるな。ほら元気だせ」 「……」 そう言いながらあったかいカフェオレを手渡され、車に乗り込んだ。 少し甘いカフェオレが心を落ち着かせてくれる。 「大丈夫か?イヤな思いさせたな」 「んー平気。写真撮らない?って言われただけだから……」 「どんな女だった?」 「男……アジア系のお兄さん。トイレから一緒だったみたい」 「……」 「……慣れてるからいいんだけどさ。ね、僕ってモテモテだよね~」 性別問わず声をかけられるのはもう慣れたことだ。 ポンポン…… ? 何故か頭を撫でられた。 あたたかい大きな手…… 「……そういうのに慣れなくていい。俺も気をつけるから、俺から離れないように」 「う、うん」 いつもより低めのトーンで話す野宮さんは少し怒っているみたいで怖い。 それでも頭を撫でてくれた手のぬくもりは優しく、僕のへこんだ気持ちや冷えた身体をじんわりと温めてくれる気がした…… ……

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