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第51話

「おお……」 「……」 「おおぉ……」 「……ふ」 「おおっ……海だ!」 遠くに見えて切り取ったような小さな景色が、海岸線に出てくるとパノラマ状態で広がっていた。 水平線……海だ。海! 「潮の香りがする。ねぇ海岸におりたりする?」 「ご希望なら駐車場に止めて……」 「する!おりたいっ!」 「はは……オッケー。その前に何か食べよう」 海岸に打ち付ける波は力強くて凪てるとは言えないけど、消えては押し寄せる泡のような波をもっと近くで見たいと思った。 音も凄い……胸がドキドキする。 それから海岸線沿いにある定食屋で、オススメの海鮮丼を食べてから浜辺と向かった。 「凄いなぁ。凄い……」 「海来たことないのか?」 「小さい頃にあるかもしれないけど、覚えてない。もっと近くに行きたい」 「濡れないように気をつけろよ」 波の直ぐ近くまで行き、気をつけながら手で触れてみた。 ザラザラとした砂の感触と冷たい海水は、寒いけど楽しく愉快だ。 「クッソ冷たい!うわっ!やっば!!」 引いた波が今度は勢い良く押し寄せ、慌てて濡れない場所までダッシュした。 しかし勢いが良すぎて砂浜で思い切り転けてしまう。 「あーあ、だから気をつけろって言っただろ」 「あはは、ビックリしたー!大丈夫!濡れてないよ!」 「あのなぁまた怪我したらどうするんだ。起きれるか?」 野宮さんは尻餅をついた僕を起こしてくれて、服についた砂をはらってくれる。 「怪我したらまた野宮さんに面倒見てもらうから大丈夫」 「あのな」 「あはは。野宮さんのそういう困った時の顔、僕好きだよ」 「……大人をからかうものじゃない」 「野宮さんこそ、僕のこと好きなくせに。我慢しなくていいよ?」 「……」 「……」 「……あ、あのな」 「……あ、当たった?へへへ、正解でしょ?」 ニヤニヤしながら人差し指で軽く脇腹をツンツンすると、おじさんの顔が赤面していて驚きつつも可愛いと思ってしまった。 ヤバ…… これはヤバいかも……

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