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第53話
赤面したおじさんの顔ってあまり見たことないかも……
困っている表情をまじまじと見つめながら思った。
確かに脈ありだと思うんだけど、野宮さんは僕に興味ないのかなぁ。
抱きしめてくれないし、今なら抱きしめても大丈夫な雰囲気だと思うんだけど。
だけど野宮さんは赤くなった顔を両手で覆い隠し、ひたすら照れているだけでそこから先に進まない。
……おじさんのくせに何その可愛い照れ方……
僕に興味ないなら今日の誘いはなんなんだ?
今日は明らかにデートでしょ?
僕が男とつき合えるって知ってるんだから、野宮さんもそうだと思うんだけど。
それに……
今の僕は野宮さんに口説かれたいって思ってる。
優しいこのおじさん……嫌いじゃない。
僕のことで本気で怒ってくれるし考えてくれて、素顔の僕と向き合ってくれるから……
全力で口説いてくれたら嬉しいのにって期待してしまう。
なーんて、あはは。
僕は多分海に来たせいで浮かれてしまっているのかも。
バカでかいこの大海原に比べたら僕なんてなんて小さく意味のない存在なんだろう。ちっさいなぁ……僕。
そう思ったら急に気分がハイになってきてしまった。
気持ちをオープンにして、今のこの瞬間を大いに楽しみたい。
何より今日ここに来たことがこんなにも楽しい!そう思えるのは、野宮さんが一緒だからに他ならなかった。
楽しくてわくわくする。
「ふはは凄い顔赤いよ。おじさん大丈夫?」
「……大丈夫だ」
「ごめん、そんなに動揺するなんて思わなかった」
「いや、宮ノ内が謝らなくていいだろ」
落ち着かせるように息を吐き呼吸を整えている野宮さんは、頭を掻きながら苦笑しているように見えた。
「やれやれ、まいったな……そんなこと聞かれるなんて思わなかったよ」
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