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第55話

駐車場へ向かい、車の後部座席に置いてある鞄の中からバスタオルを出してくれた。 「マジ冷たーい」 「本当だな。暖房つけるから乗ってろ」 「はーい」 足についている砂を払い、後部座席に乗り込んで足先を綺麗にする。 気がついたらエンジンとエアコンをつけてくれた野宮さんの姿が見当たらず、どこへ行ったのかと窓から周囲を見渡すと、自販機で飲み物を購入していたらしく、あったかいお茶とココアを手にして戻って来てくれた。 ……気が利くんだから。 自分の方が濡れてて冷たいはずなのにね。 はは…… そういうところがおじさんの魅力だったりするのかも…… そう心の中で呟いた。 …… ガチャ 「宮ノ内はココアとお茶どっちが……っ!」 ! 僕は後部座席のドアが開くと同時に、おじさんの口を塞いでやった。 勿論、自分の唇で……思い切り……! おじさんに考える余裕なんて絶対あげない。 理解できなくてよしだ。 ドアが開いた瞬間に飛びつき、両手で頬を包み込んで素早く口を塞いだ。 互いの冷たい唇が重なり柔らかさを確認すると少し角度を変えてみる。 指先に触れた耳朶がとても冷えていたので、手のひらで耳を温めるように包み込みこんだ。 野宮さんが手にした飲み物は、車内にぼとぼと落ちてしまったけれど、その行方はわからず。 ハムハムとおじさんの唇を甘噛みし、硬直する身体を抱きしめた。 首筋を撫で……うなじに触れて、短い髪の感触を楽しむ。 野宮さんの半身が外に出ている為、ドアは開けっぱなしだけれど、不思議と寒さは感じなかった。 「ん……ちょっ!……みやっ」 我に返ったのか唇を離そうとするおじさんの唇に、無理やりかぶりつきぺろりと舐めてやった。 よしよしと落ち着かせるように後頭部を撫で、隙をみせた開いた口に舌を滑らせる。 「……っ!!」 あたたかい舌に自分のを触れさせ、誘うように絡ませた。 戸惑っているのが手に取るように分かったけれど、次第に答えてくれるようになり、角度を少しづつ変えながらキスは徐々に深いものへと変わっていく。 野宮さんの大きな手が僕の頬に触れ、長い指で顎を固定される。 「……ん……ふ……っ」 お互いの鼻がくっつくくらい接近し、前のめりだった僕の身体は、大きな身体におされ後退し、気がつけば後部座席に仰向けになっていた。 バタン……とドアが自動で閉められる。

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