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第56話

背中に回された大きな手が、背骨やわき腹を確認するようにさわさわと這う。 そういう触り方ちょっとエロいなぁ……無意識なのかな? そう思いつつも、キスに答えてくれたことが嬉しくて胸がキュっと熱くなってきてしまった。 「ん……っ」 くちゅ……くちゅと車内に響く水音がたまらない効果音で、ぞくぞくしてきてしまう。 キスは慣れっこだけど、今までのが吹っ飛ぶくらい気持ちイイ。 控えめだったキスはどんどん情熱的なものに変わっていき、息が上がってきてしまうくらい濃厚だ。 ……ちょっと……気持ちよくなってきちゃった…… ここまでのキスをする予定ではなかったけれど、それでも止めることはできない。 深くなるにつれ胸にため込んでいた何かが溢れ出てくるのがわかる。 キスだけなのに、どうしてこんなにも幸せなで切ない気持ちになるんだろう。 長い長いキスが落ち着き始め、やっと唇が離れる。 冷え切っていた唇も耳たぶも身体も、その頃には熱を帯びていた。 濡れた唇がいやらしく光り官能的だ…… 「……」 「……」 チュっと瞼にキスをされ抱きしめられ…… 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」 超〜長いため息……! 野宮さんらしくて思わず笑いたかったけど、グッと堪えた。 「……観念してください」 「あああああああああああああああ」 「……今のすっごい……キスだったぁ……」 「はぁぁぁぁ……」 「……嫌……だった?」 「嫌な訳あるかよーーーーーーーーーー!!!!」 じゃ、なんなんだよっ!!! 抱きしめられつつも、なぜかため息をつかれるからこっちは混乱しちゃうじゃん! 「はぁ、嫌な訳あるか。……気持ち良すぎて突っ走ってしまったじゃないか。あのな!油断してる隙をつくなんておじさんを殺す気か!」 「だって、したかったんだもん」 「!!!ひ、人に人に見られたら!!」 「人なんていなかったよ?もうここの駐車場に僕たちしかいないって野宮さんも知ってるでしょ?」 「うぬぬ」 「へへへ、気持ち良すぎちゃったね。よかった……野宮さんもそう感じてくれて。凄〜く濃厚でもうヤバかったぁ〜最高」 じぃっと赤い顔を見つめる。 そして軽く首をかしげ触れるだけのキスをした。 「ね?……僕の気持ち……伝わった?」

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