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第65話

*********** 霧緒 「最近さ、来ないんだよね」 「……ん?」 「霖だよ。霖!週末とか毎週うちに来てたのにさ」 「……あぁ、あいつ。そんな時もあるだろ」 「どうしたんだろ。俺の飯飽きたのかな……は!もしかして霖がキープしてたアイス無断で食ったのまだ怒ってるとか?」 「……あのな、違うだろ。あいつだって色々つき合いがあるんだろ。あの人とも最近会ってるんじゃないのか?」 詩との夕飯が済み、リビングのソファーに座りながら読みかけの文庫でも読もうかと手にした時だった。 キッチンの片付けを終えた詩が、隣に腰掛けながら不満そうに呟く。 宮ノ内 霖……年の離れた俺の弟で、現在高校二年生。 あいつは小さな頃から一緒にいた俺の恋人の詩のことが大好きで、あの手この手を使って俺から詩を奪い、自分のモノにしようとしていたあざとい弟だ。 ま、どんなことしても無駄なことなんだけど。 クソガキにとられるほどやわな関係じゃないし。 執着しすぎてベッタリでムカつく時も正直あるけれど、詩の為にもそれは受け入れることにした。 詩が霖のことをとても大事にしているからだ。 それは霖が生まれた時からなので、もはや詩は霖の兄、家族と言っていい関係だ。 幼い頃に両親を亡くしている詩にとって、家族は俺が思っている以上に大切な存在なのだろう。 だから幼い霖が寂しくないようにと、いつもそばにいたのは詩だ。 ……うちの母さんは仕事優先だし、汐里も仕事、俺は基本ガキに関心ない……というかそもそも扱いが分からない。 決して愛情が無いわけではないが、育児には不器用だったので、家庭的な詩はまさに天使だった。 さすが俺が選んだ恋人だけある! そして霖が詩に依存しているみたいに、詩も霖に依存している。 隣で口先を尖らせて不満そうな恋人を見れば分かる。 やれやれ…… 「詩……霖が来なくて寂しいか?」

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