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第66話
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霧緒
手を伸ばしふわりとした感触の髪に触れてみると、くりっとした瞳が俺を捉える。
十代の頃から変わらない大きな瞳は、瞬きする度キョロキョロとあちこち見ながら再び俺へと戻ってきた。
「ちょっと……寂しい……」
「ふぅん……俺は清々してるけどな」
「清々って!……霖、野宮さんと会ってるのかな」
「そうなんじゃねーの?二人つき合いはじめたんだろ?」
「う、うん、そうらしい。鼻の穴膨らませて自慢された。同年代は退屈だし面白くないって言ってたからまさかとは思ったけど、まさかまさかの年の差カップル!」
「しっかりしてる感じの人だったし、霖にあってるんじゃないか?あいつ我儘だから年上くらいが丁度いいだろ」
「まぁね、野宮さんいい人そうだからそれはいいんだけどさぁ〜何かさ〜」
いいとか言ってるわりにはフンフンと豚みたいに鼻を鳴らしていて、いまいち納得できないようだ。
「……そんなに寂しいなら俺が相手してやるけど?」
グイッと腕を引っ張り、詩の身体を引き寄せ、抱き締めてやる。
「え、あ、ああ?ちょちょちょっと!どうした!?霧緒さん!?」
「霖のことばかり考えて、俺のことほったらかしだからさ」
首筋に唇を当てながら囁くと、詩の身体がヒクヒクと痙攣するから面白い。
「だだだって!霖は霖で、霧緒は霧緒だし!つか、ほったらかしてないし!」
「今ほったらかしてんじゃん」
「ほ!ほったらかしてなんてないです!いつもどこでも考えておりますし!」
「へぇ……いつも……どんなこと考えてるの?」
「へ……」
「俺のこと……いつも考えてるんだろ?」
「は、はい……カッコいい霧緒さんのこと……考えて……んひ……ン」
唇が重なり、喋りが中断。
唇を近づけただけで、かぶりつく様にキスをしてくる。
二人で暮らすようになってから、詩からの積極的なキスが増えた。
あわあわ赤面しながらキスを受け入れていた頃と比べると、成長していると思う。
まぁ……色っぽいキスかと問われたら、そうではないけど……
求めてくるその姿が可愛いから、内心ニヤついてしまうのだ。
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