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第68話
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霧緒
「えっと、じゃぁ……お風呂……入る……」
「OK」
「……か、身体綺麗に洗ってくれる?」
「勿論……隅々まで洗うよ」
髪をくしゃくしゃと少し乱暴に撫でながら、おでこにキスをする。
すると笑いながらぎゅっと抱き着いて来て、これがまた可愛い。
出会ってからこの年になるまでずっと可愛いと思いづつけていて、それは今も変わらずだ。
今まで色々あったけど、どんなことも二人で乗り越えてきた。
「えーと、言っておくけど霖のことを好きっていうのと、霧緒のことを好きっていうの……好きの意味違うからね」
「へぇ……どう違うんだ?」
わかってるくせに言わせたい。
詩の口から直接聞きたい。
「どう違うって……霖の好きはあくまで可愛い弟としてだよ。本当の弟じゃないけど、俺にとっては、目に入れてもマジ痛くない愛しい弟なんだ。霖がずっとずっと幸せでいれるようにっていつも思ってるよ」
「うん」
「……霧緒は、俺になくてはならない人。いつも一緒にいて欲しいって思う人だよ」
「……それだけ?」
「え、それだけって……」
「もう少し詳しく」
「く、詳しく?ですか。えーと……」
「……」
両手で俺の頬を覆い、耳の下を指で撫でながらじっと見つめる大きな瞳。
何を言おうか迷っている素振りを見せているが、普通に「愛してる」って言えば済むのに赤くなったり青くなったり……?
昔からこういうやり取りを定期的にしている気がするが、今ではどんな発言が飛び出すのか楽しみになってきていた。
「……エッチしたい……人。かな」
「……は」
「要は霧緒は俺の男だ!ってことだよ!」
「……」
「納得した?」
「……えーと、まぁした。予想外の言葉だったけど……うん、結構じわじわ嬉しいかな」
「う、うん。あ、でもエロだけじゃないから!濃いめのその顔も好きだから!意外と優しいところも好きだから!」
「濃いめの顔とか、お前にしか言われないんだけど!意外っていう一言が余計だ馬鹿!」
「だっからー!霧緒アイラブユー!ってことだよーーーー!」
「は、あはは!……わかってるって」
「へへ、へへへ!」
ソファーの上で笑い合いじゃれ合うこのひと時はガラになく甘い。
相手が詩でないとこの素の自分が出せないのは自覚済みだ。
愛しい相手が自分の事を求め必要としてくれていることはなんて幸せなんだろうと思わずにはいられない。
……
……あいつにも、霖にもそんな相手が見つかりますように。
孤独であった当時の自分と弟が少し重なって見えるのでそう思ってしまう。
弟が心から大切だと思える人が、大切だと思ってくれる人と巡り合えるようにと密かに願う。
……
さて、ではこれから二人でお風呂に入って楽しいひと時をイタすとするか。
愛しい恋人を引き寄せ、優しく囁いた。
「詩、愛してるよ」
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