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第4話

小林君は期待を裏切らない。 反応の一つ一つが可愛くて、純粋だ。 とても俺には真似できない。 最近、小林君には彼氏ができた。 声すらかけられないと言っていた片思いの相手との恋が実ったらしい。 まだ会った事はないが、王子様的な甘いマスクの年上の人らしい。 そもそも、なんで俺と紘二の関係が従業員公認なのかというと、再会の場所がココで、全従業員の前で濃厚なキスシーンを晒したからだ。 あの時の俺達には、お互いしか見えてなかった。穴があったら入りたいくらい恥ずかしい話だ。 「今度店に連れて来いよ。小林君に相応しい奴か、俺がしっかり見てやるから。」 「え、…前川さんなんか凄い厳しそう…」 「当たり前だろ?ウチの可愛いショコラティエちゃんの恋人なんだからな。」 言い方がオーナーに似てきたような気がする。 オーナーはふざけてる時、俺をウチのパティシエちゃんと呼んでいた。 俺に限らず、他の従業員にもそうだった。 雇われだけど、オーナーになった俺はその気持ちが少し分かったような気がする。 クリアケースに売上金を詰めながら当時を思い出した。 「じゃぁ、聞いてみますね。」 「あぁ。」 「…来ませんね、紘二さん。」 「は?」 「え?」 「な、なぜにそう思った…」 「だって紘二さんって、前川さんに早く会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて、衝動が抑えられなくなって、その為に無理してちょっと早めの便とかに乗って迎えに来ちゃうような人じゃないですか。」 ウチの従業員は紘二を良く理解してる。 いや、紘二が分かりやすい。 色々露骨すぎる。 佐々木さんまで小林君と同じ事を言っていた。 多分、もう一人のアルバイトの木村さんも同じ事を言うと思う。 「ほ、ほら小林君、恋人が来るんだろ?早く帰った方がいいんじゃないか?」 「あ、そうですね。お部屋の鍵とかまだ渡してなくて、待たせちゃったら悪いし…」 「早く着替えて来いよ。」 「は、はい!」 この話から気をそらそうとした時だった。 ーーーカランカラン closeの札が掛かった筈の店のドアが音を立てて開いた。振り返るとそこに立っていたのは… 「ただいま、稑くん。」 小林君に負けず劣らず期待を裏切らない紘二だった。 垂れ気味の優しくて温厚な印象の目が蕩けそうに微笑んでいる。 それだけで酷く安心した。 なんだかそれがおかしくて、顔が緩んだ後フッと堪えきれなくなった息が漏れた。

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