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Hなこと、してないよね?
歩いて20分。
石畳の歩道を歩き、うっすらと明るくなってきた街を抜けると、赤いレンガのフラットが見えた。
鍵を開けて、玄関の廊下を抜けると、リビングのソファでコーヒーを飲む劉さんの姿があった。
「Hey,you're home.(やぁ、おかえり)」
黒の短髪に、黒縁の丸メガネ。
劉さんは朝が早い。中国にいた時からの習慣らしくて、朝4時半に起きて、体を動かして、そして今みたいにゆっくりコーヒーを飲みながら、雑誌やテレビを見る。
「Hi,Liu.I'm home.(あぁ劉さん、ただいま)」
劉さんは俺よりも2つ上の22歳。
大学四年生で、来年アメリカの大学院に進むことになっているらしい。
すごく賢いけど、それを鼻にかけてなくて、冗談を言ったりする気のいいお兄さんだ。
『真尋、朝帰りなんてやるじゃん』
劉さんは日本語も少しは話せるけど、母国語である中国語と英語の方が話しやすい。
俺と同じ留学生の町田も中国語は話せないから、三人で話をする時は英語で話すようにしている。
『劉さん……俺、昨日の記憶、全然ないんだけど……』
『え、そうなの?バーで飲んでたら、真尋どこかにフラフラ歩いていっちゃって戻ってこなかったんだよ?』
『えー!?』
『全く覚えてないんだね。真尋を探して、色々店を訪ねたんだけど、いなかったんだ。洋平は酔い潰れちゃうし……』
『……ご迷惑お掛けしました』
俺は劉さんに頭を下げた。
洋平とは、もう一人のルームメイトで同じ大学の町田洋平のことだ。
町田も酔いつぶれるとは、どんだけ飲んだんだ……あいつ。
『帰ってきてくれてよかったよ。洋平はまだ寝てるし、真尋はシャワー浴びてきたら?』
『ありがとう。そうする』
本当に劉さんは良い人だな。
きっと町田の世話も焼いてくれたに違いない。
シャワーを浴びるため、バスルームに行き、服を脱ぐ。ふと、鏡を見て、驚いた。
体に点々と赤い跡が付いていた。
こここ、これって……キスマーク……?
まさか、本当に俺、掘られちゃったのかな?
男同士って、確か、お尻を使うんだよな……。
俺は思わず、お尻を拡げて見るが、切れてる様子も痛くもない。
初体験まではしてない?
でも、あのイケメンがものすごーく男同士のHが上手で、切れないようにHしてたら……。
ゴムしてたら、精液だって残らないだろうし。
俺は、自分がまだ処女であることを祈りながら、シャワーを浴びたのだった。
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