4 / 44

個人面談

まさか、自分の留学先の大学教授と寝ちゃったとは。 ショックが大きすぎて、その後の教授達の紹介は全く耳に入ってこなかった。 その後、オリエンテーションの為、いくつかのグループに分けられ、小さな教室に移動した。 先生が1グループに一人つくらしく、そこで自己紹介や1ヶ月のカリキュラムの説明を行うらしい。 こういう時の嫌の予感は当たる。 俺の担当は、ギルバード教授だった。 クールな感じの先生で、淡々と説明をしていった。 オリエンテーションはそつなく終わり、教授と学生が面談をすることとなった。 1ヶ月の目標とか不安なことを質問するためらしい。 一対一なんて、緊張する。 終わった人から自由時間になるんだけど、くじ引きで1番最後になってしまった……。 俺の番が来た。 ギルバード教授の部屋に行くと、整理整頓が行き届いていて、紅茶の香りがした。 『失礼します』 『座って』 ギルバード教授は、ティーポットで紅茶を入れているようだった。 『ヤマオカ マヒロ君、紅茶は飲めるか?』 『あ、大丈夫です』 白磁のティーカップに紅茶が注がれ、前に出される。 ティーカップのそこには蓮の花が描かれていた。 『リスニングが心配だと、事前のアンケートで答えていたが、私の英語は聞き取れるかな』 『大丈夫です……聞き取れます』 『ライティングのテストでは満点だったらしいし、レポート等の提出は問題ないだろう。聞き取りは他の留学生の中でも心配している人がいる。慣れれば問題ないだろうが、心配だったら、また相談してほしい。他に不安に思っていることは?』 『あ、あの学校の事じゃないんですけど……その、今日の朝……俺、先生の家で寝てしまったみたいで……』 緊張しながら、おずおずと話した。 『あぁ、そのことか……』 教授は立ち上がり、扉に掛けてあった札を『留守中』にして、中から鍵をかけた。 カチリという音にドキッした。 「あれは君から誘ってきたんだ」 ギルバード教授は途端に訛りのない日本語で話し始めた。 「え、先生……日本語?」 「こういう話は聞かれたらお互い気まずいだろ」 それにしても、急にそんな綺麗な日本語はびっくりする。 けど、今はそれどころじゃなくて……。 「お、俺から誘ったって……本当ですか?」 「あぁ、『寂しい、離れちゃ嫌だ』とすがりついてきてな。仕方なく、私の家に連れてきた」 そんな子どもみたいな真似をしたのか……。 顔に熱が集まるのを感じた。 「君はそのまま暑いからといって、服を脱いだり、寂しいから傍に居てだの、キスしてくれだの言って、寝た。 君がいたバーは危ない所だ。そういう関係を持ちたい奴ならいいだろうが、君はゲイじゃなくてストレートなんだろ? あんな所へは、もう行くな」 「……すみませんでした」 全く記憶にないが、かなりの醜態を見せた上に、面倒まで掛けたらしい。 「全く覚えてないんだな」 「はい、全く覚えてないんです……」 自分が情けなくなってくる。 「あの、先生……俺、先生と、その、最後までしたんでしょうか……」 もうここまできたら、どうとでもなれという気持ちになってくる。 「君は狙われやすい……細身で、肌もキメ細かくて……おまけに」 先生は、グイッと俺の顔を上に向けた。 言いかけた言葉は続くことはなく、先生は美しい顔をニヤリとさせると、俺の耳元に口を寄せた。 「最後までしたかどうか、後ろに指を入れて、確かめてみたらいい」 「え……」 『さぁ、面談は終了だ』 教授は言葉を英語に戻し、ドアを開けた。 俺は呆気にとられながらも、部屋から出るしかなかった。 『気をつけて、帰りなさい』 最後の言葉は色々な意味が込められていそうだ……。

ともだちにシェアしよう!