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恋の自覚
ギルバード教授に迷惑を掛けた夜から一週間。
様々な講義を毎日受けた。
刺激になるし、楽しいし、先生も優しくて、話しかけやすい。
それと、ギルバード教授がすごく人気者であることも分かった。
男女問わず、教授の講義を受講する学生が多い。
一度、受講希望人数が多すぎて、テストをして振り落としたことがあると聞いた。
そんな人気教授の授業を一日2回も受けられるのは嬉しいことなんだけど、やっぱり複雑で……。
「最後までしたかどうか、後ろに指を入れて、確かめてみたらいい」
あの言葉通り、確かめてみたけど……それらしい痕跡がなかった上に、何だか教授にされてるのを想像してしまって……自分で抜いてしまった。
男で抜くなんて、初めてで……これまたショックが大きかった……。
町田とご飯を食べた後、午後の講義が始まった。
ギルバード教授の2回目の講義だ。
席について、教科書とノートを取り出すと、教授が教壇に立った。
『それでは、今回からシェイクスピアの作品を読んでいく。教科書の23ページを開いて』
ギルバード教授の講義は分かりやすいけど、予習復習をちゃんとしておかないとついていけない講義になっている。
難しいけど、ちゃんとついて行こうとする人にはすごく楽しい内容だ。
俺は元々、イギリスの文学が好き。
人生で初めて読んだのは「シャーロック・ホームズシリーズ」だった。
ホームズのキレのある推理は子どもながらにワクワクしたし、読んでいて楽しかった。
中学で、英語のシャーロック・ホームズシリーズを読み始めて、日本とは違うニュアンスを読み取るのも楽しくて、本物のホームズとワトソンに会っているようだった。
古典作品の多い講義だけど、もしかしたら、コナン・ドイルも取り上げてくれるかもと密かに楽しみにしている。
『それじゃあ、今日はここまで。参考文献として、本を三冊紹介してある。興味のある人は読んで見てほしい。以上』
あっという間に講義は終わってしまった。
参考文献……、図書館にあるかな。
教授の講義の後は講義がなかったため、図書館で勉強することにした。
教授が講義であげていた参考文献を探してみると、どれも難しそうな本だった。
一冊は辞書並みに分厚くて、全部読み通せなさそうだけど、必要な所だけでも読もうかな。
そんなことを考えていたら、本棚の角を曲がった所で誰かとぶつかった。
『す、すみません……』
『失礼。……あぁ、山岡くんか』
ふと上を見ると、ヘーゼルの瞳が俺を見下ろしていた。
ギルバード教授だった。
『ごめんなさいっ!前見てなくて……』
『いや、構わないが……』
教授はぶつかった弾みで落ちた本を全て拾いあげてくれた。
『……講義で薦めた参考文献をちゃんと読む学生は初めてだな』
『え?』
『大抵は、この分厚さに嫌気がさすものだ』
いつもは笑わない教授が、薄く笑った。
それが、すごくかっこよくて……ドキドキした。
面談の時から、教授のこと意識しすぎてヤバい。
『山岡くん?大丈夫か?具合が悪そうだが……』
顔に熱が集まってる感覚。
これ、絶対顔が赤くなってるよな。
『だ、大丈夫です……っ。あの、失礼しますっ』
俺は逃げるように立ち去った。
そのまま図書館の自習室に駆け込み、椅子に腰掛ける。抱きかかえた本は、ずっしりと重くて、さっきまで教授が触ってたところを少し撫でる。
意識しすぎだ。
……どうしよ。どうしよ。どうしようっ!
「……好きかも」
俺は顔を覆って、赤くなった顔を隠しながら、小さな声で呟いた。
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