14 / 44

劉さんの男前な恋人

『そう……そんなこと言われたんだ』 劉さんに、今日のことを全て話した。 特定の相手を作るつもりは無いという発言が本当にショックで、今、相当精神的にきている。 『あと一週間しかギルバード教授といられないのに……これじゃあ告白なんてできないよ』 『でも、君自身がふられたわけじゃないだろ?』 『……ふられたも同然だよ』 俺がうじうじと悩んでいると、劉さんは時計を見た『まだ起きてるかな……』と呟くと、パソコンを持ってきた。 『君は結構落ち込みやすいんだね。うちの男前に喝でも入れてもらおうかな』 チャットアプリの通話ボタンを押す。 呼び出し音の後に、寝ぼけ眼の美少女が映った。 「劉? 你現在幾點鐘認為呢?(劉?今何時だと思ってるんだ?)」 「我很抱歉。 你睡著了嗎?(ごめんね。寝てた?)」 「我剛才練習舞台...... 那發生了什麼?(さっきまで舞台の練習してた……で、どうしたの?)」 早口言葉のように話している中国語に、少し圧倒されたけど、おそらくこの人は劉さんの恋人の「天華(ティエンファ)」さんだ。 長い豊かな黒髪をかき上げ、首元の広いシャツを着ているらしく、白い鎖骨が見えてなんだか色気が滲み出ている。 劉さんは一通り、俺のことを紹介し、今までの出来事を説明してくれたらしい。 「給他建議?(彼にアドバイスしてあげてくれないか?)」 天華さんは「ンー……」と頭を掻きながら、悩んでいる様子だったが、英語で話しかけてくれた。 『真尋は、その先生が好きなんだろ?だったら、気持ちをぶつけろ』 『でも……なんか牽制されてるみたいで、告白しづらいよ……』 『あのさぁ、お前、告白したいの?したくないの?どっちなの?』 美しい眉をひそめ、怪訝な顔をされる。 そんな顔でさえも綺麗だった。 『それは……』 俺はその問にすぐに答えられなかった。 そりゃ、告白したいけど……「特定の相手は作らない」なんて言われたらさ……告白しづらいというか当たって砕けに行ってるようなもんだ。 『国を超えた愛なんて、聞こえはいいけど、正直大変だ。すぐ会えないし。相手が困ったとき、傍にいてあげられない。真尋はそういうことも考えて、その先生が好きって言ってる?先生に言われた言葉だけで悩まずに、自分の頭で考えてる?』 国も性別も超えて恋愛している人の言葉は、重い。 でも、全くその通りだと思う。 『要は、お前の覚悟の問題だろ?先生の言葉なんか知ったこっちゃない』 ぐちぐちと悩む俺を気持ちいいくらいさっぱりした言葉で切り捨てていく。 『ぶっちゃけ、合わないなって思ったら、別れちゃえばいいじゃん。とにかく、お前がこれからも先、その先生を好きになれるかどうかをしっかりと考えること。好きになれるって思ったら、後は覚悟を決めるだけだ』 『天華さん……めっちゃかっこいい考え方ですね』 劉さんの言う通り、天華さんは外見は女性のように綺麗だけど、中身はすごく男前だ。 『ね?天華は、男前でかっこいいんだ』 劉さんが誇らしげに言うと、『お前らが女々しすぎる』と左の口角を上げてニヤリといたずらっぽく笑う。 女の人じゃないんだよなぁ……。 天華さんは人を魅了する不思議な魅力がある。 もし来日したら、本当に人気者になりそうだ。 『ありがとう、天華さん。俺、ちゃんと自分の気持ちに向き合ってみる』 『えーっと、こういう時日本語でなんて言うんだっけ?劉』 「ガンバレ」と劉さんが教えてあげると、天華さんも「ガンバレ!!」と訛りはあるけど、両手を突き上げて応援してくれた。 「ありがとう」 俺も日本語で返す。 美人で、こんな愛嬌のあって、しっかり自分の意思で動いている。絶対世界でも人気が出る。 すごいという気持ちが大きいけど、教授に言われた言葉だけでぐちぐちと悩んでいる自分がちっぽけに見えてしまった。

ともだちにシェアしよう!