「もう、お願い……っやめて！触らないでっ」 抵抗するも、男達の力が強すぎて、全く歯が立たない。 俺の萎えたモノを無理矢理しごきあげ、勃たせてきた。 『おー勃ってきたな。イッてもいいぞ？』 下品なことを言いながら、下品な笑いを上げている。 悔しい。こんなことされて、勃ってしまったことも、逃げ出すこともできないことに腹が立つ。 金髪の男は構わず、さらに刺激を与えてくる。 「あぁ……っ待っ……痛ぃ……！やめて、出ちゃう……もう、触るなぁ……ぅあぁっ！！」 せり上がった快感は止められず、俺の腹の上に白濁したものが飛び散った。 最悪だ……こんなヤツらにイかされるなんて……。 『さて、そろそろメインを頂こうかな』 そう言って、金髪の男は俺の尻を触り始めた。 メインって……。 「やめろ……！もう触るな！！」 言葉は通じていないが、抵抗しなければと大声を上げた。 すると部屋のドアが開き、「マヒロ！！」と呼ぶ声が響く。 教授が立っていた。 さっきまで会いたくてたまらない人だったのに、今の姿は見られたくなかった。 「教授……」 二人の男は、教授を下卑た笑いでからかっていたが、教授は無表情のまま男達を見下ろしていた。 呆然としているというより、何か気迫のようなものが窺える。 『おい、なんか言えよ！』と俺を押さえていた茶髪の男が、教授に殴りかかろうとした。 「っ！教授！！危ないっ」 思わず叫んでしまったが、あっという間に茶髪の男は床に転がっていた。 早すぎて何が起きたのか分からなかったけど、教授は無傷で佇んでいる。 金髪の男もナイフを教授の方に向け、切りつけようと斜めにナイフを下ろすも、刃先は教授には届かず、男の腕を教授が捻りあげ、ナイフを落とさせる。 そのまま男の首を後ろから腕で締め上げた。 初め抵抗していた男は、白目を向いて気を失ってしまった。 気を失っただけだよね……？死んでないよね？ 倒れていた茶髪の男が教授の足首を掴むと、教授は男の顔を蹴りあげ、胸ぐらを掴んで顔を殴った。 殴って、殴って、殴り続けている教授は人形のように無表情だ……。 ヤバい。教授、このままじゃこの人達を殺しちゃうよ。 「教授！もうやめて！！もう、この人達、気を失ってるから……やめて！お願いだからっ」 教授に抱きつきながら、止めた。必死で。 教授を人殺しなんてさせられない。 俺のせいで……。 「マヒロ……」 教授は、気を取り戻したように俺を優しく抱きしめてくれた。 ただただ謝るしかできず、教授は俺を少し責めたけど、着ていた上着を着せてくれた。 俺は教授の家に連れて行ってほしいとお願いした。 「こんな格好じゃ帰れない」なんて言い訳したけど、本当は違う。 この時、俺の中で、一つの考えが芽生えていた。 下着とズボンを履き、教授のコートを羽織り、家へと向かった。 教授の家に行くのは、二回目だ。 一回目はベッドの上で教授と知り合って、そこから飛び出した。 あの時は急いでたから、ゆっくり家の中を見ることは出来なかったけど、とても大きな家だ。 一戸建ての家で、家具もアンティーク調で揃えられている。 「シャワーを浴びてきなさい。上の服は私のシャツを貸すから」 教授はそれだけ言って、ドアを閉めるとすぐに俺は服を脱いでシャワーを浴びた。 男達の触られたところをすぐに流したかった。 気持ち悪い笑い、気持ち悪い手……俺の中のあいつらの記憶も全て流し去りたかった。 シャワーを浴び終わり、教授のシャツを着る。 柔軟剤の香りがほんのりきいてて、少し落ち着く。 教授のシャツは大きくて、ぶかぶかだったので、袖を少し捲らせてもらった。 リビングに行くと、眼鏡をかけ、本を読んでいる教授がいた。 いかにも英国紳士然りとしていて、また少し緊張した。 彼はこちらに気づくと、「何か飲み物を出すから座ってくれ」と一人がけのソファーを勧めたが、俺は彼のシャツの裾を摘んで、止めた。 「教授は……誘ったら、誰とでも寝てくれるんですか……？」 「急に君は何を言い出すんだ」 「あのバーで一晩の相手を探していたっていうのは……本当なんですか？」 「……そうだ」 「俺、ジョージに全て聞いたんです。あの日酔った俺を助けてくれたこと。あの夜何も無かったこと。あなたが、昔ひどい振られ方をして、本気で恋をできないこと……。それ以来、遊びでしか男を抱かないって。俺を本命にしてとは言いません。けど、一晩だけ相手にしてくれませんか……？」 眼鏡の奥のヘーゼルの瞳が見開いた。 それから眉を寄せた。 おかしな奴だと思われているだろうけど、俺は本気なのだ。 結ばれなくてもいい。 最後の最後に一度だけこの人のものになりたい。 この人をものにしたい。 「マヒロ……その顔はやめろ。君のその顔は、男を勘違いさせる」 その顔って……俺、今すごいこわばった顔してて、変な顔してるのに。 「勘違いしてください。それとも、一晩の相手もしたくないほど……俺のこと嫌いなんですか……？」 他の男は抱くのに、俺は抱けないんだ。 「マヒロ……それは、違う」 教授は俺をソファーに押し倒した。 急に押し倒され、驚いた。 「私が君を一晩の相手にしないのは……君が大切だからだ」 「大切……？」 「君が、一晩だけの相手なんて勿体ない……私をこんなに愛しい気持ちにさせるのは君だけだから」 愛しい気持ちって……。 「マヒロ……君が好きだ……だから、一晩の相手など、そんなことを言わないでほしい」 そっと唇が重なる。 教授の部屋の紅茶の香りが、ふわりと鼻腔に広がった。